第43話メイソン視点
愚かなゲラン王国の現場指揮官が、怒り狂って襲い掛かってきた。
何の策もなく、騎馬隊の突進力を利用しただけの、一点突撃だ。
十分な準備をしていた我々には、蛮行にしか見えん。
痛い所をつかれて、怒りに我を忘れているのか、それとも元々愚者なのか?
もしかしたら、自分の行った恥知らずな自国民殺しを、我々や配下の将兵だけでなく、自分自身の心も誤魔化そうとしているのかもしれん。
本当に何も考えず、此方が何重にも罠を張っている誘導路に入ってきた。
千を超える騎馬隊でも殲滅できるように、細く長く曲がった誘導路に、何の疑問も持たずに突撃してきた。
まあ、敵には誘導路だとは分からないのだろう。
見た目は街道を護る馬防柵による関所か砦だからな。
そこを勇猛果敢に突破したと思っているのだろう。
最後尾の騎馬が誘導路に入り込んだので、隠していた扉で入口を閉める事で、袋の鼠状態にしてやった。
逃げ道を完全に防いでから、左右から弓を射掛け、次々と殺していった。
後は単純作業だ。
正確に狙って射殺するのだ。
単に殺すだけならば、縄を張って馬の足を引っかけ、転倒落馬させる方法もあれば、落とし穴に落とす方法もある。
高所に岩を集めておいて落とすという策もある。
同じ弓矢を使うにしても、狙いをつけずに遮二無二に射殺す方法もある。
だがそれでは、貴重な軍馬まで殺してしまう事になる。
憎しみあっているマイヤー王国とゲラン王国は決して認めないが、ズダレフ王国を加えた三カ国は同じ騎馬民族だ。
だから馬をとても大切にする。
産まれた馬を調教して乗馬にまで育てるのも大変だが、火や矢を恐れる事のない、戦場で使える軍馬にまで育てるのは、途轍もない時間と金がかるのだ。
だから敵の軍馬を生きたまま捕獲する事にした。
だがこんな事は、練度の低い軍隊ではとても無理だ。
特に急遽集めた民兵では絶対無理だ。
民兵は死傷する事を極端に恐れている。
初陣や数度戦っただけの者は、訳も分からず武器を振り回せればいい方で、多くはその場にしゃがみこんだり隠れたり、中には逃げ出す者さえいる。
だが私が指揮する部隊は歴戦の傭兵部隊だ。
契約料はとても高いが、練度は民兵と比較にならない。
元々戦いで利益を得る事が目的の組織だから、命の危険を冒してでも金目の物を確保しろと命じても、ちゃんとやり遂げてくれる。
まあ、分配金は色を付けなければいけないが、それでも私の取り分は大きい。
何より敵の主力である騎馬隊を殲滅し、此方の騎馬隊を増強する事ができる。
問題があるとすれば、実戦を重ねる度に私が傭兵に影響されることだ。
どうも実戦中は言葉遣いが乱暴になっているようだ。
戦いが終ったら元に戻さないと、嫁さんを怖がらしてしまう。
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