第4話 彼女の提案と彼の条件

彼の声が欲しい…私の作る曲に入れたい。


でも、何故こんな歌声を持っているのに、ここにいるのだろうか…普通ならもっと幼い頃から芸能界に入ったり、プロとして活躍しているだろう。いくら本人が嫌だと言っても周りの大人が黙ってはいないはずだ…。

湊にはそれくらいの才能があるのだ。

「ねぇ、湊…なんで芸能界に入ってないの?」

「え…?なんで…?」

湊がキョトンとした顔で、こちらを見上げてきた。自分の歌の上手さが異常な事に本人はまだ、気づいていないのだろうか…。

「湊はさ、私以外の前で歌ったことある?」

少しの沈黙が流れた。私は馬鹿な事を聞いたと思い「いや、何でもない」と、言おうとした。

すると、それに被せるように、湊が喋りだした

「入院」

へっ…??

「入院してたから」

湊が入院していた?

「俺、産まれてからずっと入退院を繰り返してたから…人前で歌うの他の人より極端に少ないかも」


????


ちょっと理解ができない…脳みそパンクしそう

「アハハハハ なるちゃん、理解出来ないって顔してるね」

そりゃあそうだ。今日1日、この1時間以内だけで、色々なややこしい情報が無茶苦茶入ってきたのだ。しかも、こんなに元気そうな人が入院していた…?

ちょっと頭を整理しよう…

つまりは、こういう事か…住岡湊は、天才的な歌唱力をもっていて、それが周囲にバレなかったのは、入退院を繰り返して、人前で歌うことがほとんどなかったから…。

え、、、湊がこれだけ凄いと知っているのはほんの一部の人だけなのか…!!


私は、更に彼の声が欲しくなった。


「ねぇ、湊、芸能界とか、人前で歌うのに興味はない?」

「えっ?どうしたの?急に笑」

あっ、そうか、湊の歌声がどれだけ凄いのかを説明しないといけないや

「湊の歌声に私はゾクゾクした。湊は物凄い歌唱力を、持っている。それを使って色々な所へ行ってみたくない?」

「なんか、褒められてて恥ずいんだけど…」

「いやいや、凄いのは確かなんだから。置いといて、芸能界に興味無い?」

「いや、興味無い事はないけどさ…それって俺自身が活動者側になるんでしょ?」

「うん、そうだけれど…」

湊は、活動者になるのが嫌なのだろうか…嫌ならば仕方が無いか。私が言ってどうこうなる訳でもないし、どれだけ天才であっても嫌だと言う人に私の曲を歌ってほしくない。私の曲が進化するとも思わない。

だが…この天才を逃すのが、惜しい気もする…。

「う~ん。さっきも言ったようにね、別に活動者になるのが嫌って事はないんだけど…なんかあんまり惹かれないかなぁ〜。苦労が絶えなさそうだし笑 あっ、でも雫石に会えるなら別だな。」

いや。ごめん湊。その雫石、私だから…。もう、既にあってるから…。

でも、私が雫石だということを湊に伝えれば、一緒に活動してるだろうか…。しかし、もしもそれでも嫌だと言われた時のリスクが大きすぎる。


キーンコーンカーンコーン


「あっ、俺もう授業行かなきゃ!!またね、なるちゃん(^^♪」

あっ、行ってしまった。

湊も行ったし、私も家に帰るか…

それにしても、私が雫石だと、湊にバラすか…バラさずに諦めるか…う~ん。どうしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます