青に向かって歌え

横光凛音

第1話 知らないで欲しかった

勉強なんてめんどくさい…


私、加賀見 なるは今年高校3年生になった。私の通う高校は単位制高校で3年生までに74単位をとれば卒業することが出来る。好きな時間に、授業を受けることが出来るのだ。

私は既に70単位を取り終わっているため、あと4単位取れば卒業できる。


今日は1講を受け終わったので帰ってもいいのだが…こんな晴れた日には、屋上で作曲するのが最近のマイブームだ。


キィーー


少し錆び付いたドアを開けると、真っ青な世界が広がった。


「あれ…?」


今日は誰か先客がいるようだ。屋上の隅で男子が寝ている。近づいてみるとなかなか整った顔立ちをしていて、色素は薄くフワッフワッな髪の毛。これは、さぞかしモテるだろうと思った。


「君、誰…?」


突然、目を開けて話かけてきた。起きないと思っていたのに、起きた事に驚いてしまい、心臓がバクバクとなっている。


「どうしてこんな所にいるの?」

「どうしてって…ここにいたらいけなかったかな?」

「い、いや…私が言いたいのはそうじゃなくって…ここで何をしていたのかな?って」

「あー、そういう事か!歌ってたんだよ。ここ、あんまり人来なさそうだから」

確かにここに来る人は少ない。というか今日までここに来る人を、私は見た事がなかった。それに、ここで歌いたくなる気持ちもよく分かる。開放的で歌いたくなってしまうのだ。


「誰の曲を歌ってたの?」

「雫石って知ってる?」

「へっ…?」


私は驚いた。その名前が出てくるとは思っても見なかった…何故なら、私の使う活動名と同じだったからだ。でも、もしかしたら彼の言っている【しずく】は私では無いかもしれない。もしかしたらがあることを願って彼に聞いてみた。


「しずくってどんな人?」

「雫石の事知らないの?最近かなり有名なんだけど…」 


そう言って彼はスマホを差し出してきた。

どんどん心拍数が上がっているのが分かる。冷や汗もかいてきた。

恐る恐る彼のスマホを覗き込む。

見るんじゃなかった…私は猛烈な後悔に襲われた。なんなら彼に会いたくなかった。雫石って誰?なんて聞くんじゃなかった。


彼の言う雫石とは、私の事だった…


最近、有名になってきたという自覚は多少あった。だが、学校で私の活動の事を耳するとは、全く思ってもみない事だった。





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