「再会」(昭和35年 1960)松尾和子

 この曲を最初に聴いて、この曲を最初にカラオケで唄ったのはいつの頃だったか忘れてしまいました。

 女性歌手の曲を唄うこと自体、男性とすればそんなに無いものと思いますが(その逆のパターンは多いと思います)、しかも、松尾和子の曲です(笑)


 松尾和子と言えば、ナイトクラブ系のデュエット曲が有名ですが、今じゃパワハラ・セクハラと言われて当然の、女性に対するデュエットカラオケ強要へのバッシングがまだ叫ばれていなかった時代ですら、私は唄ったことはありません。

 そういえば、当時は、デュエットのみならず、これ系の曲に合わせてチークダンスの相手として同僚・部下の女性を指名する、なんてのも平気で行われていた時代です(今の若い人からすれば、信じられないことでしょう)が、私は、その経験も今のところありません(笑)


 しかし、この曲は好きで、よく唄います。しかも、唄っても、この曲を知っている同席の人はほとんど居らず、最後まで独りで静かに唄い終わります(笑)


 ムード歌謡の女王だった松尾和子のソロとして再出発したシングル曲で、大成功を収めた曲になりました。

 YouTubeを見聴きしていただければわかると思いますが、その悩まし気なボーカルスタイルは唯一無二です。なんといっても「ああ、ああ~あ」の吐息のようなスキャットが絶妙です。いくつかの動画を見ると、微妙に歌い方を変えているのがわかりますが、私は、かすれて消え入りそうな「ああ、ああ~あ」よりも、濁音が入る「ああ、あ”~あ」の方が好きです(笑)


 この曲の聴きどころは、それだけでなく、歌詞であります。

 テレビスタジオ収録や歌謡コンサート系だと、1番と3番の2コーラスを歌う場合がほとんどでした。そして、その歌詞を見ると、ある不幸そうな女性の心象を表したものになっていてどうってことないのですが、問題は、テレビではオンエアされることがほとんどない2番の歌詞です。

 この女性が再会を強く求める対象の男性が監獄の中にいるのです。もちろん、男性の素性、男性がなにをやらかしたのか、刑期はどれくらいかはまったくわかりませんが、ともかく、監獄の中に居て、鉄格子の小さい窓から青空を眺めているのです。だから、この曲に出てくる女性の心象を本当の意味で理解するには不可欠な2番なのですが、いかんせん、「監獄の壁」という歌詞がテレビ受けしないのでしょう、カットされて、どうってことのない女性の再会を望む心象だけを映したのでした。


 男性は獄中にいながらにして、女性に対してこんなにも切なく恋焦がらせている、それこそ罪深い男なわけですが、どんな男なのでしょう?

 2番の歌詞の冒頭で「みんなは悪いひとだというが」とありますので、これは、かなり筋金の入った犯罪者であろうと推測できます。もしかして、やくざ者かもしれません。

 しかし、同じ2番の歌詞の続きで「小っちゃな青空 監獄の壁を みつめつつ泣いてるあなた」というのが出てきます。果たして、筋金の入ったやくざ者が、監獄の壁を見つつ泣くか?いや、同じ獄中の囚人を従えた長になっていても、泣きはしないだろうと思います。

 よって、想像力を働かせると、やくざ組織の身分が上の者の身代わりとして獄中に入れられた、もしくは、やくざ組織に裏切られて、一人罪を背負わされた、なんて背景が浮かんできます。

 3番の歌詞で、この女性がしおらしく、かつて、男と一緒に来た海に行って切ない気持ちを吐露するわけですが、その女も2番の歌詞では「わたしにゃ いつもいいひとだった」とあるように、自分のことを「わたしにゃ」と言うこの女性も、人生の裏街道を歩いてきた女のような気がします。


 ちょっと、深読みすぎでしょうか(笑)

 

 YouTubeにアップされている動画を探しましたが、1番2番3番のフルコーラスの曲が見当たりませんでした。

 いずれしましても、松尾和子のムーディーな世界を堪能いただけると嬉しいです。



♪「再会」(昭和35年 1960)松尾和子

 作詞:佐伯孝夫 作曲:吉田 正

https://www.youtube.com/watch?v=6x45u7e7H6Q(1番・2番)

https://www.youtube.com/watch?v=et-FqkZJc4Q(1番・3番)

 


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