第104話 明けて(4)

もうそのあとは


ドンチャン騒ぎで。



カウントダウンパーティーだったはずなのに


いつ年が明けたのかもわからなかった。




高宮は勢いで


どんどん飲まされた。




ずっと禁酒をしていたので、ビール3杯くらいで意識が遠のいた。



そして


5杯目あたりでソファに転がって寝始めた。




「ちょっとぉ・・加瀬! 高宮、寝ちゃってるし~!」


南が夏希に言った。



「え~? ほんと? すっごい久しぶりに飲んだからかも、」



「ほんま。 偉かったよね~。 ずうっと酒やめて。 加瀬のために。」


南は彼女を小突いた。



「隆ちゃんは,、真面目な人なんで。」


夏希がポツリと言うと、



「も~~、やってらんないし~!」


後ろから八神がからかうように言った。



「もう幸せだからさあ。 何言ってもムダやって。」


南は笑い飛ばした。



連れてきたあんこは子供たちと一緒に寝てしまった。



気がつけば


屍累々の状態で


みんな地べたに寝込んでいた。




「う~~~~、きもちわる・・」


翌朝。


何とか起きた高宮だったが、朝食も食べられないほど二日酔いだった。




「隆ちゃん、早く仕度しないと。」


夏希が声を掛けた。



「え? なんで?」



「これから隆ちゃんの実家に行くんでしょ。」


ほとんど寝ていないだろうに、ケロっとしている夏希は


やっぱりケロっとして言った。



「はあ? んなこと昨日まで言ってなかったじゃん・・」


ガンガンする頭を抑えながら高宮は言った。



「え~。 普通はお正月のあいさつに行くでしょ~?」


すると話を聞いていた南は笑って、



「加瀬のが正しいやん。 ほんま成長したな~~、」


夏希の頭を背伸びして撫でた。



「へへ、」


夏希は照れたように爽やかに笑った。





「どうしたの・・・顔色悪い、」


一度家に帰ってから、実家に新年の挨拶に出向いたのだが、ヘロヘロな高宮に妹の恵は心配そうに彼の顔を覗き込んだ。


「や・・」


悟られたくなくて顔を背けた。


「昨日。 社長のお宅でカウントダウンパーティーだったんです。 もーすっごく楽しくて。 そこで飲みすぎちゃって、」


夏希はクスっと笑った。


「お兄ちゃんたら、飲めないのに。」


「飲まされたの!」


「少し横になってきたらどーですか? ほら、『ウコン』も買ってきたし。 それ飲んで。」


夏希はコンビニで買ってきたドリンクを差し出した。



「そうよ。 そうしてきたら?」


恵も勧めた。



「でも、残念です。 お義父さんもお義母さんも留守なんて。」


高宮を部屋に連れて行ったあと、夏希は恵に言った。



「とにかく新年は挨拶周りで忙しいので。 あたしと良さんも午後から出かけます。 せっかく来ていただいたのに。」


恵は申し訳なさそうに言った。



「いいえ。 急に来たので。 逆にすみません、」


夏希はニッコリ笑った。



そして、


「赤ちゃん、いつごろ生まれるんですか?」


夏希は恵に訊いた。



「7月の半ばくらいです。 ほんと父は喜んで。 あたしに外出もさせないくらい心配して。」



「そうですかあ。 あたしも楽しみです~。 赤ちゃん、大好きだから・・」



「だけど。結婚式には出たいの。」


恵は夏希に微笑みかけた。



「え、」


「お兄ちゃんと加瀬さんの。  あたしも絶対に出たいから。」


「恵さん、」


「・・お兄ちゃんがあたしの結婚式に出てくれなかった理由。 後から母に聞かされました。 あたしは泣いて母に怒りました。 なんて酷いこと言うのって。 お兄ちゃん、とても傷ついただろうなあって。」


あのときのことを


言われると


色んなことを思い出してしまって


夏希は胸が痛かった。

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