第101話 明けて(1)
高宮と夏希はジュエリーショップに寄って、壊れてしまった指輪を直しに出し、フツーにそのまま北都邸に出かけた。
「あ、加瀬さん。 こんにちわ、」
絵梨沙が社長宅のリビングでパーティーのセッティングをしていた。
「こんにちわ! お久しぶりです~。」
「こちらこそ。 あ、高宮さんですね、」
後ろにいた高宮を見やった。
「あ・・どうも。 お世話になります・・」
遠慮がちに頭を下げた。
ここに北都社長を迎えに来る時に時々彼女とは顔を合わせるだけで、あまり会話を交わしたことはなかった。
それにしても。
見れば見るほど
死ぬほど
美人だな。
絵梨沙を見てつくづく思ってしまった。
あんな野獣の奥さんなんて
全然想像つかないし。
「あたしも何かお手伝いを、」
夏希は言うが、
「ああ。 いいのよ。 こっちはあたしたちがやるから。 ええっと・・じゃあ、悪いんだけど。 ウチの方に竜生と真鈴がいるからちょっと見ててくれる?」
「あ、はい! ぜんっぜんOKですから~。」
「高宮さんも、どうぞ。」
「え、おれも?」
「真尋もいると思いますけど。 どうぞ、」
二人で真尋宅に上がって行った。
「あ! ナッキー!」
真鈴が走ってきた。
「真鈴ちゃーん。 久しぶり~! なんか大きくなった~!」
夏希は真鈴を抱き上げた。
「ナッキーって・・」
高宮がつっこむと、
「ほら、ここの子たちインターナショナルじゃないですかァ。 呼び方もね、」
夏希は笑った。
そして連れてきたあんこを真鈴に見せると、
「わ~~! かわいー! だっこしていい?」
彼女は大喜びだった。
「うん。 いいよ。 真鈴ちゃん、ちょっとあんこのこと見ててくれる?」
「うん!」
「竜生くんは?」
「ぴあの!」
真鈴はニッコリ笑った。
そおっと
真尋宅の子供部屋を覗いた。
すると
竜生が真剣な顔でピアノを弾き、横で真尋が腕組みをしてそれを聴いている。
なんか・・
すんごい
大人っぽくなっちゃった。
久しぶりに見た竜生は立派な『少年』だった。
「すっげ。 英才教育?」
高宮が言うと、
「竜生くんは3歳くらいのときからずっとピアノやってるの。 ほら、八神さんの結婚パーティーのときに弾いてたでしょ? すんごい上手なの~。」
その時、真尋が夏希たちに気づいた。
「あ! こらっ! 覗くな!」
いきなり怒られた。
「は、はいっ! すみません!!」
夏希は反射的に謝った。
真尋はドアのほうに歩み寄り、
「あっち行ってろ。 シッ!」
二人を追いやった。
「・・すみません、」
竜生の練習の邪魔をしてしまったか、とちょっとしょぼんとした。
「ピアノのことになると結構厳しいんですねー。」
夏希は真鈴をおんぶしながら言った。
「ま、いちおう、世界の『ホクトマサヒロ』だしな・・・。」
二人は仕方なくリビングに戻った。
「まったく! 加瀬たち、こっちによこすならひとこと言えって! 今、竜生ピアノの練習してたのに・・」
真尋は携帯で階下の絵梨沙に電話をした。
「ごめんなさい。 練習してると思わなくて、」
絵梨沙はうっかりしたことに、ちょっとだけ反省した。
「準備、OKですかねえ、」
萌香はセッティングを見て言った。
「ん。 もう5時かあ。 そろそろ・・初めよっか。」
南は時計を見た。
「みーちゃん、」
真鈴が夏希たちと一緒にやって来た。
「あ、真鈴。 今、呼びに行こうと思ってたんだよ~。」
「すみません、お手伝いもしないで、」
夏希が言うと
「ああ、いいから。いいから。 あんたたちはもう座ってて。」
南の
満面の笑みに
高宮は何だかわからないけれども
ブルっと寒気がしてしまった。
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