第60話 第二の事件(2)

別に


夏希はそれからもいつもどおりだったので


八神は特に彼女に何も言わなかったけれど。



「ねー、八神さん。 これでいいと思います?」


企画書を彼に見せた。


「え? なんっか・・字が読みづらい。 曲がってるし・・」


「え~? そうかなァ。 根性曲がってんだ、」


夏希はアハハと笑った。



残業中でパソコンのファンの音が耳に残る。


気がついたらもう二人だけだった。



「犬っころは迎えに行かなくていいの?」



「え? ああ。 今日は隆ちゃんも遅いから、ペットショップに預かってもらうことにしたんです。 もう少し大きくなったらお留守番もできるんでしょうけど。 まだトイレとかも危なっかしいし。 かわいそーですけど。」



「デート。 ダメになったの?」


さっきのことに触れてみた。


「え? あー。 まあ、隆ちゃんは社長の都合で急に仕事が入ったりするんで。 今までもゴハンの約束しててもダメになったことたくさんあったし。 今回は久しぶりの昼間のデートだったんでちょっと楽しみにしてたんですけど、」


と、ちょっと照れて夏希は笑う。


「久しぶりっていつ以来なの?」


「えっと・・え~~? 夏休みの時だったかなァ。 それもまたウチの実家に行ったから・・別に二人とかじゃないんですけど、」


「は? 夏休み?」



って


もう12月になるってーのに??



「いいの? ソレ・・」


思わず聞いてしまった。


「え、別に。 あんこが来てからは、けっこう家を行ったりきたりするし、」


夏希は普通にそう言った。


「夜ばっかかよ、」


思わずつっこむと、


「な・・なにやらしーこと想像しちゃってんですかっ! ほんっと八神さんってやらしー・・」


夏希は軽蔑のまなざしで八神を見た。


「自意識過剰だっ!」


心外なことを言われてそう言うと、



「そんないっつもやってないし!!」


夏希はいきなり絶叫した。



バカか


コイツ・・。


八神のほうが赤面してしまった。


「ほんっと、スケベなんだから!」


尚も言う彼女に


「どっちがだっ!」


腹立たしくて思わず書類でパカっと夏希の頭を叩いた。


「も~~、なに~?」


自分が言ったことも全く無意識のようだった。


「でも。 隆ちゃん、あんまり忙しすぎて身体のほうが心配なんだけど。 あたしもいろいろメイワクかけてるし、」


とギブスの腕を笑って見せた。



ほんっと


コイツのこーゆートコ。


グっとくる・・。



八神は思わずデスクに突っ伏した。



「え? なんのリアクション?」


夏希は彼の背中をゆさぶった。




そして


日曜日。



八神は真尋の仕事につきそうため朝から北都邸を訪れた。


「眠い・・」


だらだらと仕度をする真尋に


「も~~、いい加減しゃんとしてください。 眠いって、もうすぐ10時になるんですよっ! 今日は収録でついたらすぐにリハなんだから、」


八神はいつものようにだらしない真尋にため息をついた。


時間がないので真尋の車を貸してもらって出かけようと1階に降りていく。



すると


車庫から車が1台出ようとしていた。



え・・?


そのアウディは


高宮が運転し、助手席には真緒が乗っていた。



高宮・・?



八神はしばし呆然とその車を見送る。



って


加瀬とのデート


断ってたよな???



八神は


普通の人間が思いつく想像を


頭いっぱいにしはじめた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます