第45話 ふたりの生活(2)

確かに。


彼女の下着をこうやって干したりするのは


恥ずかしいけど。


そんなこと言ってられないし・・


高宮は健気に夏希の世話をした。



結構・・


セクシーな下着があったりして、手に取るだけでちょっとドキドキする。



「あれっ、きれい・・」


夏希はキッチンに行って驚く。


「ガス台とシンク周りは掃除したよ。 あと、お風呂とトイレも。」


ベランダから戻ってきた高宮は言う。


「え~、そこまでしてくれたの?」


「だってできないだろ? てゆーか。 ゴミの分別もいい加減だし。 冷蔵庫も賞味期限切れのものたくさんあったし。 冷凍庫はアイスでいっぱいだし。」


怒られてしまった。


「すみません・・」


「昨日はバタバタしてあんこを預けっぱなしだから、あとで迎えに行ってくるから。」


「そうだ~。 あんこ、寂しくて鳴いてたかなあ・・」



夏希の携帯にメールの着信音が鳴る。



「ん?」


開いてみると八神からだった。



『おい、ぶつかった車がぶっ壊れたってホント? やっぱおまえはすげえな。 頑丈にもほどがあるぞ!』



その文面に思わず吹き出してしまった。


それでも最後に



『ゆっくり休めよ。 頭ぶつけておれより利口になったらしょーちしねーからな。』


と彼女を心配する文章が書かれていてちょっとジンとした。



「なに?」


高宮が気になって聞くと、


「ああ、八神さんです。


「頭ぶつけておれより利口になるなよ、だって。 ほんっとに八神さんっておもしろいんですよぉ、」


夏希はおかしそうに笑う。




なんだか八神に対してそんな笑顔を見せる彼女に少し妬けてしまった。



前々から少し気になっていた。


八神さんが夏希に対して


『後輩』以上の気持ちを抱いている気がして。



ほんと


二人、すっごく仲いいし。


よく昼飯とかも一緒に食べに行ったりするのも見かけるし。



なんと言っても。


あの地下室で一晩一緒に過ごしてしまった仲だし?


あのときのことは自分の気持ちは封印したけど。


胸まで触ったとかいうし!!



だんだん思い出して腹立たしくなってきた。


「ん、どしたの?」


夏希は無邪気に聞いてきた。


「え・・いや。 八神さんとは気が合うよね。 夏希は、」


と、少しいじけ気味に言った。


「ああ・・けっこうそうかも!」


夏希はその空気を全く読めずに喜んだ。


「八神さんって、最初はほんっと抜けてる人だなあって思ったけど。 ほんと優しいし。 なんか同級生の男の子みたいな感じで。 憎たらしいことも言うんですけど、基本めちゃくちゃ言うこともおもしろいし。 話しててすっごく楽しい、」



そんな満面の笑みで言うなよ・・。


高宮はため息をついた。


「でもね。 もう桃ちゃんのことになるとメロメロで。」


「は? 桃ちゃん??」


「八神さんちの子! ほんっとかわいいんですよ。 ウソみたいに。 実際、八神さんに似てるんだけど~。 てことは八神さんがかわいいってことなのかな?」


「まあ・・かわいいんじゃないの?」


仕方なくそう言った。


「この前なんか! 八神さんってば机の下に手を入れてゴソゴソやってるんですよ。 何してんのかな~って見たら。 バナナ食べようとしてて! 『これ、気づかれないように食うの、難しいよな。』って。 その時まだ午前中の10時くらいで。 なんでこんな時間にバナナ食べたいのかなあって。 もうおかしくておかしくて!」


思い出してゲラゲラ笑ってしまった。



結局。


同じレベルなんだよな。


この二人。


高宮が八神に対して小さなジェラシーを感じていることなど夏希は全く思いもしなかった。




「あれっ、今日高宮さんもお休みですかあ?」


真緒は秘書課に行って、彼の気配がないことに気づき他の女子社員に聞いた。


「ええ。 今日は社長もお休みですし。 なんか用があるとかで、」


「あ~もう・・あたしだけ時差ボケおしてきてるの~?」


不満そうにそう言った。




八神は隣の夏希のデスクを何となく寂しげに見てしまった。



『ぜんっぜんOKですから! さすがに今日は体中痛いけど、収まったら行くから待ってて下さいね!』



元気いっぱいなメールの返信が来たけど。


普通、交通事故なんかに遭ったら、精神的にもすんげえダメージだよな。



高宮が甲斐甲斐しく面倒みてるんだろーけど。



なんっか


おもしろくね~~。



八神は


自分でも不思議な気持ちになっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます