第41話 アクシデント(1)

「なんか意外、」


真緒はふっと微笑む。


「え、」


「高宮さんて、すんごいお嬢さんとつきあってるのかと思った。」



そんなこと


つくづく言われると


ちょっと恥ずかしい。



高宮は目をそらしながら


「そういう子とつきあってたこともあったけど・・」


ごにょごにょと照れ隠しにそんなことを言ってしまった。



真緒は


そんな高宮を見て


少しだけ寂しそうな顔をした。




なんか


こい~~~


1週間だったなァ・・。



高宮はつかれきって、ホテルのベッドに横たわった。


もちょっと暇かと思ったけど


思いのほか交渉が長引いて。


ほとんど自由な時間がなかった・・。


オルセーとか見たかったけどなあ・・。


プライベートで来ることとかあるのかなァ。


彼女と?


って


ヨーロッパって感じじゃないしな。


やっぱ南の島?


来年の夏あたり二人で行きたいなあ。



妄想しているうちに


服のまま眠りに堕ちてしまった。




明日の昼


いよいよ日本に戻る。



『・・というわけで、成田には午後4時ごろ着くと思います。 そのまま帰ることになると思うから、また電話する』



夏希は高宮からのメールを読み、



そっか


夕方には帰れるんだあ。


ゴハンとか作ってあげよっかな。


隆ちゃん、けっこうカレーが好きなんだよね~。


タイカレーとかに挑戦しちゃおっかな~~。


大胆なことを考えていたのだが。



その日の午後


夏希は斯波に言われて、レックスに書類を届けることになった。


地下鉄を出た後、そんなに広くはない道路を渡るのに信号を待った。


すると、そこにいた3つくらいの女の子がふわふわと漂う風船のヒモを持ちながら、母親と信号待ちをしていた。


夏希と目が合って、ニッコリと笑う。



かんわい~~~。



その女の子がかわいくて、夏希は小さく手を振った。


女の子も嬉しくて手を振ろうとしたが


「あ・・」


風船を手から離してしまった。


一瞬の隙に女の子が風船を追いかけて道路に飛び出した。



「・・ナナちゃん!」


母親は驚いて手を出そうとするが、女の子はあっという間に道路に飛び出す。


その時、車が走ってきた。


「危ない!!」


夏希は思わず飛び出した。




「あ~~、よく寝た・・。 でもなんで疲れ取れないのかな~、」


真緒は成田について伸びをしながら言う。


「超爆睡してたじゃない、」


高宮は笑う。


「え、イビキかいてなかった?」


真剣に聞かれて思わず笑ってしまった。


「高宮、ごくろうさん。 直接帰りなさい、」


北都は言った。


「え、でも。」


「真緒とタクシーで帰るから。」


「そうそう。 あたしがついていますから。 大社長には、」


真緒は父の腕を取ってニッコリと笑う。


「・・はあ、」




北都を真緒に託し、キャリーバッグを引きずりながら外に出ようとすると携帯が鳴った。


「えっと・・」


高宮はポケットからようやくソレを取り出した。


「はい、」


と出ると、



「あ、やっと出た!」


けたたましい声が聞こえた。


「南だけど! ・・加瀬が大変なの!」


かなりの興奮状態だった。


「え・・」



「交通事故に遭っちゃったの!!」



その言葉に


高宮は固まったままその場に立ち止まってしまった。


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