第二章 Ghost

公爵家令嬢 ヘンリエッタ

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〜ハスエラ市街地・ラッセル公爵邸〜

「そらそらそらそらっ!くたばりやがれですわぁぁぁぁぁっ!!」

私は部屋に隠してある護身用の拳銃に弾丸を込め、人々から「信徒」と呼ばれている怪物の頭部に狙いを定めて、投げナイフを投げた。

「グオッ!」

「グガッ!?」

一発一発、正確に信徒の頭部を狙い、相手の間合いに近づかれる前にナイフを投げる。信徒達でごった返す私の家・・・「ラッセル公爵邸」内に1人、生きたまま取り残されてしまった私にできる事は、それくらいだった。

つい数時間前のことであった。私がいつものように食堂で食事・・・ではなく読書をしていると、突然、使用人の何人かが苦しみ始めたのだ。両親や弟と一緒に、苦しんでいる使用人達に何があったのかと考えていると、例の苦しんでいた使用人達はものの数分で、醜い姿におぞましいほどの殺気を漂わせた、理性のない怪物・・・いわゆる「信徒」へと変わり果ててしまったのである。

それからは、外から入り込んできた個体も含む信徒達による蹂躙が始まってしまったのだ。信徒化しなかった使用人も、家族も、あっという間にあっという間に殺されてしまった。そして何とか2階の自室まで逃げ延びた私は、助けが来るまで、扉の前で待機して迎撃に専念する事にしたのである。

「ヴヴヴヴヴ・・・。」

「ァァァァ!」

「○▼※△☆▲※◎★●ー!?」

全く、次から次へと・・・。

「面倒ですわねっ!!」

私は服の中に仕込んであるナイフを取り出しては投げ、その仕込んであったナイフを切らして以降は室内のろぅかーから控えのナイフを取り出しては投げを繰り返し、こちらへ向かってくる信徒達の頭部を刺した。

「ガアッ!」

「グオッ!」

「グァァッ!?」

ふぅ。護身用としてメイドから習っていた投げナイフの技術が、まさかこんな状況で役に立つ事になるとはね・・・。(そのメイドは信徒に追い詰められて、抵抗むなしく、私より早く殺されてしまったみたいだけど・・・。)

「グォォォ・・・。」

「ガァァァッ!!」

殺しても殺しても湧いて出てくる信徒達・・・何とかならないものかしらぁっ!!

「そらっ!はっ!たっ!そぁぁぁぁぁぁぁっ!」

はぁ。これでは、ナイフが何本あっても足りませんわ・・・。一体、この街で何が起こっているのかしら・・・。

「繧、繝偵ヲ繝偵ヲ繝抵シ∫?エ螢奇シ∵ョコ謌ョ?∫汲豌励ぅ繧」繧」繧」繧」?」

「繧ゅ▲縺ィ陦?繧抵シ」

「・・・。仕方ありませんわ!!」

そして数分後。迫りくる信徒の数と勢い達にナイフが追いついていない状況で、とうとう最後のナイフを投げてしまった私は止むを得ず、部屋の窓から飛び降りてここを離れる事にした。武器はもう部屋には無い。というわけで、今は道端で拾ったレンガを持っている。

はぁ・・・。あまりこういうタフガイな武器は得意では無いのだけど・・・。背に腹は変えられませんわ。

「ふん!はぁっ!」

私はさらに追いかけてくる信徒達の攻撃を上手く避けつつ、近づいてくる個体の頭を何とか砕きながら、遠くへ、さらに遠くへと逃げた。しかし・・・。

「ヴヴヴヴヴァ!!」

〜ハスエラ市街地・メインストリート〜

VS血塗られた影

私が丁度、メインストリートに入りかかった時だった。近くに倒れたいた遺体らしきものが膨張して爆発したかと思うと、その中から、血みどろの醜い巨人のような、はたまた悪魔のような、恐らく信徒と思われる怪物が現れた。

「ヴァァァァァ!」

私が「血塗られた影」を見た瞬間、その恐怖は一瞬にして私の身体と心を支配し、私の身体は、針で貫かれたように動かなくなった。

「・・・あ・・・。ありえま・・・せんわ・・・こんな、こんなバケモノが現実に存在するなんて・・・!」

「ヴァァァァァ!!」

そしてその怪物は、恐怖で動かなくなっている私に、容赦なく手刀を振り下ろした。

「ソイヤァァッ!」

しかしその手は私の身体を砕く前に、割り込んできた何者かのハンマーによって弾き返され、結果、私は何とか九死に一生を得た。

「大丈夫かい?ヘンリエッタ。」

そして目の前には、見知った男性の姿があった。

「カール!」

彼の名は「カール・フォン・バルテル」。名の知れた豪農の長男で、私の友人でもある男性だ。

「あなたがなぜここにいるのかしら?」

「たまたまこの街まで商談に来ていたところだったんだけど・・・こりゃあ酷い有り様だねぇ。オマケに、この街に通ずる門は閉められ、僕がこの街から逃げようとした時にはもう完全に封鎖されてるときたもんだ。・・・僕とキミが生存していることさえ、外に知らせることができれば良いんだけどねぇ・・・。それよりも・・・。」

「ええ。今は目の前の敵に集中すべきですわね。」

私とカールは血塗られた影の方へと向き直り、再び戦闘態勢に入る。

「蜻ス縺ョ迢ゥ莠コ縺九?繝サ繝サ縲ゅ□縺後?√◆縺九′莠コ髢?莠コ蜉?繧上▲縺溘→縺薙m縺ァ菴輔b螟峨o繧峨s繧擾シ∵ョコ縺呻シ∵ョコ縺呻シ∵ョコ縺呻シ?シ?シ」

「うるさいですわ!」

「フン、全くだよ。はぁっ!」

「ヴヴ!?」

私はレンガを、カールは鉄のハンマーを手に、それぞれ頭部と腹部に攻撃した。

それなりにダメージは入ったようだけれど・・・あちらもかなりタフなようですわね・・・。

「險ア縺輔〓?∵ュサ繧抵シ∵ュサ繧抵シ∬イエ譌上↓縲∵ョコ莠コ閠?↓縲∫叫莠コ縺ォ縲∵ュサ繧抵シ?シ」

血塗られた影が啖呵を切るように何かを叫び、こちらに再び手刀を振り下ろしてきた。

「ボクが弾く!」

「では、私が一発ブチ込みますわ!!追撃も頼みますわよ!!」

「フッ。任せて。」

カールが得意のハンマー攻撃で手刀を弾いたその隙を突いて、私はレンガを思い切り顔面に投げつけた。

「ゴァッ!?」

「カール!今ですわ!」

「ハァァァァァァッ!!」

そして、そのレンガがしっかりと顔面にヒットしたことで、血塗られた影に大きな隙ができた。カールはその隙を見事に突き、思い切り後頭部をフッ飛ばした。

「やったかな?」

「いいえ。まだ息がありますわ。」

「ならもう一度ッ!!だぁぁっ!」

それでも尚、死ななかった血塗られた影は反撃をしようとしていたが、私がそれをカールに知らせた事により、カールは、さらに自由落下でかかる重さを生かして左腕と左足をもぎ取り、その傷口に、毒が塗られてあるナイフを何本も刺す事ができた。

「ガァァァァァァァァァァ!!」

そして、血塗られた影は私達に対してせめて一矢報いようとするも、もはや身体がロクに言うことを聞かないらしく、毒が効いてきてからは地面をのたうち回りながら散々叫んだ挙句、最後は自らの傷口を抉りながら死んでいった。

「「哀しき者よ。どうか、安らかに。」」


リザルト

《血塗られた影》

カール・フォン・バルテルとヘンリエッタ・ロア・ラッセルの攻撃により死亡

〜ハスエラ市街地・路地裏〜

「さてと・・・ここらでお別れだね。ヘンリエッタ。」

「?お別れって・・・門の上を飛び越えるにしても地下水路から抜けるとしても、こんな路地裏からどうやって?」

「ん?何を言っているんだい?この街から出るのは君の方だよ?」

「?」

私は、カールが何を言っているのか分からなかった。ここは路地裏。このまま路地裏を抜けて関所(門)の上を飛び越えるのはさすがに無理があるし、この辺りに地下水路へ通ずる扉は無い。つまり、今ここで私と離れる意味は無いということである。ましてや、この状況で街から出るのがカールではなく私というのも、ますますその意味の分からなさに拍車をかけていた。

「はぁ。察しが悪いねぇ。さっきの『血塗られた影』は、気付いてたんじゃ無いかな?何となく、そんな感じがしたんだよ。」

「?何を言って・・・?」

「えーとね、つまり・・・。」

そして次の瞬間、私の腹部に鋭い痛みが走った。

「・・・え?」

「本当に、さよならってことだよ。ヘンリエッタ。」

腹部に刺されたのは、恐らく血塗られた影の傷口に刺していた毒が塗られてあるナイフだろう。・・・何で彼が、私に攻撃を・・・?

「・・・今までボクは、ただの豪農の息子としてキミと接していたけど・・・それは、本当のボクじゃ無いんだよ。」

「ど、どういう意味・・・。ですの・・・?」

私は意識が朦朧としていく中、なんとか口から言葉を捻り出す。

「・・・本当のボクはね。『命の狩人』なんだよ。」

「・・・!?」

「聞いたことくらいはあるだろう?農家はただ、父上がそうだったから副業として最低限のことをやってるだけ。ボクの本分は『命の狩人』なんだ。」

「な・・・」

私は、もうまともに回らない頭をフル回転させて状況を整理しようとするも、あまりの衝撃に思考が次々にこんがらがる。

「いやー、助かったよ。あのデカブツの命は肥大化してて狩り甲斐がありそうだったからね。オマケに、上品で質の良さそうなキミの命までもらえるときた。こんなチャンス、逃すわけにはいかないだろう?フフッ。特に、ヘンリエッタ・・・公爵家のご令嬢である君の高貴な魂を取り出すときは、より一層キミの命を丁寧に扱わなくちゃあね・・・ハハハハハ。ハハハハハハハハハハハ!!」

「ざ、戯れ言を・・・!私は決して、貴方を許しませんわ!末代まで呪われることを覚悟しておくのですわね!」

「ハッ。もう毒がかなり回っているだろうに、よく喋れるね。うるさいお嬢さんだなぁ。ま、楽しみにしとくよ。ハハハ、は、はぁ、ハハハ、は、ハハハハハハハハハハハ!!」

カールの狂いきった笑い声がメインストリートに響いていた。そして、その笑い声がさらに狂っていくたびに、私の意識は薄れていく。そして最後には、

「ハハ、はぁ、はぁ・・・。なーんだ、暴れ回らないんだ。さっきの血塗られた影みたいに、のたうち回ってくれたら面白かったのになぁ。ヘンリエッタ。キミの身体は見てたところで、もうつまんないから・・・とっとと頭を潰して楽にしてあげるよ。せめてもの慈悲ってやつさ。じゃあね。」

カールは私の頭部を蹴り砕き、私という1人の人間にトドメを刺した。


《ヘンリエッタ・ロア・ラッセル》

カール・フォン・バルテルの毒ナイフと蹴りによって死亡


〜トピック〜

ヘンリエッタ・ロア・ラッセル

数ある貴族家のうち、「御三家」と呼ばれる三大名門の一つに数えられるほどの貴族家である「ラッセル家」の長女。彼女の特徴の中でも特に、「〜ですわ」という口調と、卓越した投げナイフの扱いは一際目立つ。一見自分勝手に振る舞うお嬢さまのようだが、面倒見がよく、情に厚い。

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