そこに集うは三つの魂

〜ハスエラ市街地・メインストリート〜

僕は屋根の上を走り、空を飛び、屋根を登り、追いかけてくる信徒達から逃げ続けた。

「っ!!どこまで追いかけてくるの!?このバケモノ達は・・・!」

そして僕は、建物の上を走っているうちに見つけた鍛冶屋へと入店する事にした。

〜ハスエラ市街地・鍛冶屋〜

「ヴヴヴヴヴヴヴヴ!」

・・・武器を探して入ってみたは良いものの、やはり店主も手遅れのようである。竜人のような姿になった店主は、手に持っている斧を振りかぶり、今にも僕の首から上を消し飛ばさんとしていた。

「あちゃー・・・。やっちゃったなぁ・・・。」

「ガオオオオオオオオン!」

そして、店主だったらしき竜人型の信徒は、振りかぶっていた斧を、勢いよくこちらに振り下ろしてきた。

・・・こういう時こそ、冷静になるんだ。普通なら、大騒ぎして思考がまとまらないまま、斧に顔面を消し飛ばされて終わりだけど・・・。冷静になれば、本当にコンマ数秒程度だけど、考える時間は与えられる・・・。

振りかぶっている腕を見ろ。理性を失った信徒は、単純な行動しかしない。故に、振りかぶり方が分かれば、斧の刃がどこを吹き飛ばすのか・・・という、大体の軌道は読める。今は・・・ざっくりと、僕から見て右上から左上に振り下ろす!だから僕は、右下に避けつつ距離を詰めて、手に持っている斧を足場にして肩まで登り、顔面を殴れば良い!そして、その斧を奪って殺す!上手くいく自信はない!でも、やるしかない!!

「はっ!」

僕は右に身体を傾けつつ前転し、標的を視界から見失って戸惑っている信徒の斧に足をかけ、斧から右手へ、右手から右肩へと駆け上がっていった。

「ヴォ!?」

そして、僕の足が右肩に到達した時点でやっと現在の状況を理解した鍛冶屋だった信徒は、左手で僕を殴ろうとする。しかし僕は、その手が出るよりも先に渾身のサッカーボールキックを信徒の顔面に喰らわせた。

「グエッ」

しかし、竜人らしい見た目に反しない肌の硬さのせいか、ダメージはほとんど入っていないようだった。一瞬だけ仰け反らせる事はできたが、体制を崩す事ができた訳ではなく、当然、蹴りの勢いで首を吹っ飛ばせた訳でもなく・・・本当に、仰け反らせただけであった。

「うわー、硬っ!」

しかし、これで接客カウンターの奥に行ける!

店主であった生前のごとく、接客カウンターの前で待ち構えていた元鍛冶屋の信徒がいたせいで、武器がたくさん置いてある接客カウンターの奥には行けなかったが・・・その信徒に近づいた今、接客カウンターの方向に向かって跳べば、武器は手に入るはず!

と思った僕は、両足に精一杯の力を込めて、信徒の顔面にドロップキックを喰らわせ、その反動で武器がたくさん置いてある接客カウンターの奥へと跳んだ。

「よし!これで!」

そして僕は置かれている様々な武器の中で、一風変わった見た目をしている「破壊籠手バスターガントレット」という武器を右手に装着し、信徒に目線を合わせて構えをとった。

「グゥゥゥゥゥ!!」

「うあああああああ!!」

僕は、襲いかかってくる信徒の股下を抜けて背後に回り、さらに飛び上がってその背中を人差し指と小指にあたる部分に付けられた穴付きの爪で切り裂いた。。

「ゴァァ・・・。」

「はぁぁっ!」

さらに僕は、その爪で切り裂いた背中を抉るように追撃を加える。悶える信徒の表情は、もはや人間だったものとは思えないような醜さであった。

「ごめんね、店主さん・・・。はぁぁぁぁぁっ!!」

そして最後に僕は銃が置いてある場所へと移動し、近くにあった2発の弾丸を人差し指と小指の先に空けてある穴に詰め、そのまま指先に力を込めてその弾丸を発射した。

「ガァァァァァァァァ!!」

その2発の弾丸をまともに受けた信徒は傷口から大量の血を吹き出して倒れ、二度と動く事は無かった。

「ふぅ。・・・もう、見慣れたよ。死体なんて。はぁ。悲しいものだね。」

僕はそう言って、醜い姿の元店主の亡骸をその場に放り投げて店を後にした。

〜ハスエラ市街地・メインストリート〜

それにしても・・・。この信徒の数はどう考えても異常すぎる。一体、どれだけの人間が例の洗礼もとい儀式を受けたのやら・・・。やっぱり、世界は「腐っていた」のかな・・・。一部の異質な存在は差別するのが当たり前・・・みたいな価値観が根付いている、というか、僕みたいなのがいる時点で、皆がそれに気づいていたら・・・幾分かは、あの偽預言者のうわ言に騙されずに済んだのかもしれない人はもう少し残っていたじゃないかと思うけど。まあそんな事、今更後悔しても遅いわけで。それに、人々はそれに気づかなかったんだ。それはそれで仕方ないって事で。

・・・いけない、いけない。何かあの日以降、少しずつ心が荒んでいっている気がするよ。あの日以前の僕なら、あの人達でさえ迷わず助けていたかもしれないのに。・・・はぁ。常に追い詰められている状況っていうのは、本当に人を変えるものなんだね・・・。エマさんや避難民の人達が呑まれた「狂気」っていうのも、何となくわかる気がするよ・・・。

「ガァァァァ・・・。」

「オオオオオオ・・・。」

あー、どうしよー・・・。そういえばあんな奴がごまんといるんだよね、この街には・・・。

「あー、あー・・・どーしよーかな、これ。・・・いや、どうするも何も、とりあえず殺すしかないか。信徒はもう人間じゃないんだし。」

そして僕はメインストリートを抜け、何とか落ち着ける場所がないかと、おりあえず図書館へと入った。

〜ハスエラ市街地・ハスエラ図書館〜

「ァァァァ・・・。」

「ォォォ・・・。」

「ァァァァァァァァ・・・。」

「マモラ・・・ナク・・・チャ・・・。図書館ヲ・・・ガァァァァ!!!」

あー、やっぱダメだこれ・・・。僕は本当に、もう安全な場所など残っていないのだなと、改めて実感した。

「ガァァァァ!」

「ヴヴヴヴヴヴヴヴ!」

そしてやっぱり、気付かれたら襲いかかってくるよね・・・。うん、知ってたよ、この展開。ハハハハハ・・・。

自分でも気付いていた。僕はもう、いろいろと限界だった。僕はいろんな人達の支えを受けて、ここまで逃げてきて・・・オマケに武器まで手に入れた。しかし、それは良いものの・・・。やはり、あまりにも悲しいことが多すぎた。苦しいことが・・・多すぎた。・・・もう、僕には・・・9歳男児の心には、耐えられないほどに負荷がかかりすぎていたのだ。

「あー、ここもダメか・・・。」

僕は破壊籠手を構え、彷徨う信徒達に向かって突進していく。

「殺さなきゃ・・・信徒を・・・もっと殺して、安息の場所を・・・この街に安寧を・・・。」

そして僕は図書館内を駆け回り、躊躇なく信徒達をすれ違いざまに斬りつけながら指先から弾丸を発射して瞬時に追撃を喰らわせ、あっという間にこちらへ真っ先に向かってきた3体の信徒を捌ききった。

「ひゃはははははははははは!!!いひっ!いひひひひひっ!!いひっ!!」

気がつけば今の僕はもう、エマさんやたくさんの人間が目の前で死んでしまったことをすっかり忘れ、もはやただの少年から、信徒達の血に飢えた、ただの猛獣へと化していた。

しかし・・・

「そこまでだ。・・・狂気に呑まれてはならない。」

「正気に戻りやがれッ!」

男女の声と同時に受けた頭部への強い衝撃により、僕は一瞬だけ我を取り戻し、すぐに気絶してしまった。



・・・。

「ふぅ。何とかなったな。。」

「ああ、。全く、狂気にゃつくづく悩まされるもんだぜ。チッ!」


〜トピック〜

破壊籠手バスターガントレット

一般的な皮と鉄で作られた籠手(右手のみ)の人差し指と小指の付け根あたりに鋭い鉄製の爪を付けた武器。その爪で敵性対象を斬り裂いて使う武器だが、その爪が付けられている人差し指と小指の先端となる部分には穴が開けられており、そこに.44マグナムの弾丸を詰めた状態で人差し指と小指を伸ばしたまま拳を握るような動作を行うと、関節の自由を確保するために装甲が緩くされている部分で力が増幅し、弾丸を撃つことができるようになっているが・・・詳しい原理は不明である。

この武器の製造元は「命の狩人連盟」という、文字通りに命を狩る殺人集団が密かに運営している裏世界の武器工房。連盟員はよく言ったものだ。

「命は迅速かつ派手に狩ってこそ輝く。」

鋭い爪と2つの銃口により、至近距離から中距離までの高速戦闘を可能にした破壊籠手は、まさしくその言葉を具現化したかのような武器であると言えるだろう。

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