第14話

 桃源寮は思ったよりも小さな寮だった。

 寮って言うより洋館だ。

 

 それにしてもまさか女子生徒たちと一緒の寮だとは。

 空いている部屋があるからとは言われてたけど、本当にいいのか?


 俺は少し心配だったが、それもすぐに吹き飛んだ。

 寮の前では一人の小柄な女の子がほうきで掃いて掃除していた。


 髪は長く、色素が薄いのか白かった。

 体は小さく、中学生、いや小学生くらいしかない。

 眠そうな大きな目をしている。

 白いシャツに黒いエプロンワンピースを着ていた。


 そしてこの学園では珍しく胸がぺたんこだった。


 俺はひと目見ただけでドキッとした。

 体が熱くなる。


 顔を赤くする俺を見上げて、桃音は首を傾げた。


「どうしたの?」

「…………いや、なんでもない。それをよりあの子は?」

「あの子? ああ。あれはあたし達の寮母さんだよ!」

「寮母さん………………?」


 俺は目を疑った。

 だってどう考えてもあの子よりここにいる三人の方が年上だ。


 俺たちが近づくと寮母さんはこちらに気づいた。

 優しく笑う。


「もしかしてその人が牧野先生ですか?」

「あ、はい。はじめまして。今日からお世話になる牧野壮士です」


 俺は緊張しながら頭を下げた。

 寮母さんもお辞儀する。


「わたしはこの桃源寮の寮母をしている小毬美羽です。よろしくおねがいします」


 こまり。

 名前まで小さな人だ。

 俺はドキドキしながらそう思った。


 それにしても本当にこの人が寮母さんなんだろうか?

 どこからどう見ても幼い女の子にしか見えない。


 俺がジロジロ見ていると、寮母さんは首を傾げた。


「どうしました?」

「い、いえ……。その、すごく若く言えるので……」

「ああ。なるほど。小さくてすいません。わたしは小学五年生から成長が止まってしまったので」


 寮母がずーんと暗くなる。

 どうやら気にしているらしい。


 だけど自分よりも年下で背も胸も大きい生徒達と暮らしていたら落ち込むか。

 俺が苦笑いしていると桃音が話しかける。


「寮母さんはこう見えて二十六歳なんだよ」

「マジかよ……」


 俺より年上?

 そんなのありか?


 俺が驚いていると寮母さんは微笑んだ。


「もうみんなと仲良くなったんですね。すごいです」

「いえ…………、なんというか成り行きで………………」

「そうですか。初日から大変でしたでしょう。まあまずは中へ。お荷物は部屋に届いてます」


 寮母さんはやさしく寮の洋風の扉を開けてくれた。

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