姉妹会議
「えへへー」
「良かったじゃない」
「うん! デートだデートー」
まなみが嬉しそうに笑うのをみてホッとする。
私に変な気を使って楽しめないんじゃ意味がない。
「でも、良かったの?」
「良いわよ。まなみなら」
「ふーん?」
「な、なによ……」
何故か目を細めてこちらを見るまなみ。
「お姉ちゃん、私相手なら取られないって、思ってる?」
「なっ⁉」
こんなまなみの顔を、初めて見た気がした。
私にとってずっと、まなみは可愛い妹で、無邪気に笑っている、そんな存在だった。
でも今見たまなみの顔は一瞬、なんて言ったら良いかわからないけど……女の顔だった。
「あははー。私はちゃんと康貴にぃが好きって言ってるからねー?」
「ちょっ……その……えっと……」
「あはは。まあ、お姉ちゃんたちが大喧嘩でもしない限り康貴にぃが私のほうに来ることはないと思う……というか、二人が喧嘩してたら私がそれどころじゃないしなぁ……」
まただ……。
まなみが、私の知らない表情をしていた。
でもそれは、まなみの本気度を示したものだったから……。
「喧嘩なんかしないわよ」
私も応えないと。
「えー? 長く付き合ってたら絶対すると思うけどなぁ……あーでも、康貴にぃ全部我慢しちゃうかぁ」
「えっ」
「ほら、お姉ちゃんって思ってることが顔に出やすいから、察しないでいいところまで察して我慢しちゃいそう」
「そうなの……?」
康貴が我慢……? 喧嘩?
全然想像できない……というより、私はこれまで康貴とそんなに真剣に、ぶつかったことなんてなかった。
「あとはまあ、いまはお姉ちゃんが康貴にぃのこと大好きすぎて大抵のことはなんでも許しちゃうだろうしなぁ」
「そ、それは……」
そうかもしれない……けど、面と向かってそう言われると顔が熱くなる。
「そもそも他の女の子とデートを許しちゃってるし」
「う……でも……まなみだから……」
「そう! お姉ちゃんも康貴にぃも、私のこと妹だと思って油断してるでしょ?」
ニヤッと笑うまなみ。
「私だって、お姉ちゃんたちと一つしか変わらないんだからね?」
そう言ってこちらを見つめるまなみはやっぱり、妹じゃない一人の女の子の顔をしていて……。
「私も、負けないから」
「ふふ……お姉ちゃんはずっと勝ちっぱなしだから、もうちょっと油断してくれてても良いんだよ?」
自分でけしかけたくせによく言う。
本当にまなみは、私たちのことを良く思っているんだなと思う。
「あーあ、お姉ちゃんと康貴にぃが結婚でもしてくれたら、私も諦めが付くのになぁ」
「結婚っ⁉」
「あはは。まだまだ隙が多そうですな。お姉ちゃんは」
結局私は、そうなってもまなみに敵わないんじゃないかって、そう思わせるようないい笑顔だった。
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