合宿2

「頑張ってるわね」

「あ、お姉ちゃん!」


 部屋でしばらく集中していたら愛沙が入ってきた。気づいてなかったが随分集中していたらしい。


「そろそろ休憩にしたら?」

「うんー!」


 嬉しそうなまなみを見ると結構無理していたのがわかる。

 頑張ってるときは俺が休憩の時間を作らないとな……。いいタイミングで来た愛沙はさすがお姉ちゃんだなと思った。


「クッキー焼いたから持ってくるわ。飲み物、コーヒーがいい? 紅茶?」

「クッキー!? やったー! 紅茶がいい!」

「まなみは紅茶ね。康貴は……紅茶よね」

「ああ、ありがと」


 それだけ言って下に降りていく。


「クッキークッキー!」


 待ちきれないまなみもすぐについていったので俺も手伝いのために下に降りることにする。


 結局全員下に集まったのでリビングで休憩になった。


「美味しー!」

「よかった」


 まなみは吸い込むようにクッキーを食べ続けていた。


「口、ついてるわ」

「えへへー」


 時折こうして愛沙に拭いてもらったりしているのも微笑ましい。


「美味しいねえ、康にぃー!」

「そうだな。ほんとにうまい……」


 なんか母さんが一度高そうな洋菓子を買ってきたことがあったがその時のより美味しい気がする。


「作りたてを食べてもらえて良かったわ」

「康にぃー、そっちのも食べたいー」

「はいよ」


 抹茶味とか紅茶味とか色々用意してくれていたので俺の前にしかない味がちらほら出てきていた。

 取ってやると何故か口を開けて待っている。


「あーん」

「なんでだ」

「あーん!」

「……仕方ないな」

「ふふふー」


 満足そうで何よりだが、あんまり愛沙の前でこういうことをしてるとなんか機嫌が悪くなることが多いので気が気じゃない。


「なによ……」

「いや……」


 愛沙の様子を伺うとそんなに機嫌が悪くなってる様子がなくて安心する。それを見て何を思ったかまなみが身を乗り出して騒ぎ出す。


「お姉ちゃんもやってほしい?! ほしいよね!?」

「なんでよ」

「私だけあーんしてもらうのは不公平かなって」

「私は別に──」

「ほらほら康にぃ! やってあげて!」


 まなみに押し付けられるようにクッキーを持たされる。仕方なく愛沙の方を見ると怒ってるのか何なのかよくわからない表情で顔を赤くして横目にこちらを見ていた。


「なに……やるならやりなさいよ!」

「いや、無理にとは言わないけど……」

「やりたくないの!? まなみにはやったのに!」


 どうすりゃいいんだ……。


「ほらほら、お姉ちゃんも待ってるよ」

「あれは待ってる……のか?」

「待ってるよ! ほらほら!」

「わかった……はい」

「ん」


 静かに愛沙の口にクッキーが運ばれる。

 顔を赤くしたままこちらを睨むように見つめてくるが、ここのところよく話していたおかげだろうか。

 その表情も何故か少し可愛く見えてしまう自分がいた。

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