登校日
「なんでこんな中途半端な日にやるんだろうなぁ? うちの登校日は」
前の席から気だるそうに暁人が声をかけてくる。俺もこの意見には同意だった。
まだ夏休みも序盤、これからだというところでわざわざ集めるのは嫌がらせ以外の意図を感じられない……。
「部活やってると毎日来てるからあんま代わり映えしない気はするけどな」
「そうか? 俺はジャージで来れるか制服着せられるかだけでもなんか違うな」
暁人と俺の会話にナチュラルに混ざる隼人と真。
「俺たち帰宅部へのダメージは甚大だわ……」
特段気にする様子もない暁人。というわけで珍しいメンバーで机を囲むことになる。
周囲も違和感は感じたようだがあまり気にする様子はないみたいだった。まあ愛沙みたいなアイドルと絡むのとは違うから目立つにしても敵意までは向けられないようだ。
「で、夏休み前半戦、ちゃんと高西とデートはしたのか?」
「そうそう、その辺りの話を聞きたくてな」
お前ら……。
暁人と隼人はこのあたりウマが合うらしく意気投合した様子だ。助けを求めて真を見るが顔に気になると書いてあった。四面楚歌だ。
「別に変わったことはない」
「なるほど、あの高西姉妹を独り占めして海に行くのも大したことではないと」
「お前……」
ニヤニヤする隼人を睨むがどこ吹く風で聞き流された。あの日はちょっと助けられた手前責めにくいところもあってそれ以上何も言えなくなる。
「やるじゃねえか康貴」
「さあ洗いざらいキリキリ吐けー。他にどこいって何した!?」
暁人と隼人の悪ノリで声が大きくなってきたのでとりあえず落ち着けるためにこう言うしかなかった。
「とりあえず教室では勘弁してくれ……」
◇
昼休み。
昼食スペースとして解放されているバルコニーで結局3人に囲まれていた。
ちなみにこの場所は暗黙の了解でスクールカースト上位専用のスペースになっている。当然俺はこれまで足を踏み入れたことはなかったので入っただけでなんかもうそわそわしてしまっていた。
「というかお前ら、まだ付き合ってないのか?」
「むしろ付き合ってると思う要素、なかっただろこれまで」
真の言葉を受けて振り返るが、愛沙と話し始めたのなんて本当にここ最近の話だ。それまではあれだ、たまに目があって睨まれるだけの関係。
「いや、俺たちからすると割と真面目に驚いてる」
なんで隼人まで……と思ったら暁人にまで追い討ちをかけられる。
「だよなぁ。やっぱ俺の目に狂いはなかったわけだ」
「暁人の目は結構狂いっぱなしな気がしてたんだけどなぁ……」
流石にもう俺たちの関係が睨まれるだけのそれと違うことくらいわかってる。とりあえず一通りあったことのうち話せることは諦めて話すことにした。
ただここ最近の交流って、こうして同級生に話せば仲のいい男女ではあるんだが──
「どうしてもこう、どんどん家族って感じになってるからなぁ」
「それは確かに……」
「正妻の風格があるな」
「家族公認だし」
これだ。いやなんか違うのもある気はするが。とにかくこのせいでどうもこう、感覚が狂うんだ。
「はっきりしたいのはあれだな。康貴、お前が高西を好きかどうかだ」
「それは……」
どうなんだろう……。
そりゃ愛沙は可愛い。ただそれは、誰に聞いたってそうだ。
今俺が愛沙に抱くこの感情は、もちろんマイナスではないんだが、何か当たり前で、家族なら当然の感情にも思えてしまう。
「それかあれか? 妹の方が好みか」
「なるほど……」
「やめろやめろ」
まなみのことまで考える余裕なんかない!
「とりあえずそろそろ飯食おう。時間なくなるぞ」
「そうやってごまかすから……」
「ま、休み明けの楽しみってことにしとくか」
「むしろ休み中に何回か話しようや」
とりあえず時間も時間ということで有耶無耶に出来たが、夏休み中何回かこのメンバーで集まることも決まった。
なんだかんだ楽しいメンバーではあるので、この手の追及以外の部分はそれなりに楽しみな自分もいた。
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