キャンプ①

「いやぁ、久しぶりだねぇ。愛沙ちゃん、まなみちゃん」

「あ! おじさんだー!」

「お久しぶりです……」


 キャンプの日はあっという間にやってきた。母さんがその気になって高西母に連絡、あとは両家の父親の予定次第だったが、休みのタイミングはすぐにあったらしい。

 ちなみに俺と愛沙の関係より両家の両親同士の仲は良好だ。俺が知らない間に家庭教師の話がまとまるくらいには……。


「じゃ、いくか」


 愛沙たちは車で家まで来ている。運転手のおじさんが手を振ってくれていた。


「あ、あんたはあっちの車よ」

「は?」


 なんで?


「うち、後部座席潰して2家族分の荷物いれてるの」

「え、聞いてないんだけど」

「まあ良いじゃない。早く行っておいで」


 まじか……。うちの車も高西家の車もそんなに広いわけではない。

 当然後ろに3人になると密着する。


「で、なんで真ん中なんだ……」

「ごめんなさいねぇ、狭い車で」

「いやいや、それは全然……むしろお邪魔してすみません」


 身軽なまなみあたりを真ん中にすればよかったんじゃ……。

 そう思っていると愛沙が声をかけてくる。


「康貴、酔うでしょ?」

「あ、あぁ、なるほど」


 俺はあんまり乗り物に強くない。前の景色が見えたほうが酔わないというのもある。

 しかし愛沙、よくそんなこと、覚えてたな。


「ありがと」

「ん」

「ちょこちょこ休憩するからな。康貴くんは狭いかもしれんが我慢してくれ」

「あ、すみません。ありがとうございます」


 おじさんにそう声をかけられて出発となった。


 ◇


「まなみ?」

「……」


 出発して5分も立たず寝息を立て始めるまなみ。


「あらあら。康貴くんが隣だと安心するのかしらねぇ」


 おばさんはそう言ってるが両親の前でもたれかかられるのはなんというか……緊張感がある。


「心配しなくても、康貴くんにならうちの娘をやらん! なんて言わないからな」


 おじさんまでこんな調子なので余計いたたまれなかった。

 愛沙がなぜか袖をぎゅっと握ってきていた。心配しなくてもまなみを取ったりしないから安心してほしい。


 ◇


「ついたー!」


 山道に入ったあたりで目を覚まし流れる景色を追いかけていたまなみが駆け出す。


「大丈夫?」

「なんとか……」


 うねる山道はまなみのテンションをあげたが俺の体調にはネガティブに影響した。


「すまんなぁ、康貴くん」

「いえ、うちの車より絶対ましでした……」


 なぜかハンドルを握るとテンションがあがる父親はこの山道も荒々しく駆け上っていた。あれに乗ってたら着いた瞬間リバースだったと思う。


「康貴ー! ちょっと休んだら荷物だすぞー」

「わかった」


 男手は3人。しっかり働くとしよう。


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