流石に暴論だ~!
神聖国・大荒野
ん? 気のせいか……今遠いお空に何か見えたような気がする。
もしかしてあれがラ〇ュタか? ラ〇ュタは本当にあったんだ!
「ノイエ~」
「はい」
「あれ見える?」
僕が指さす方をノイエがジッと見つめる。
「馬」
「馬か~」
「空を走ってる」
「馬だから走るよね~」
特に何ら反応を示さずノイエが僕から離れて行こうとする。
待ちたまえノイエよ。がっつかれるのは好きじゃないが余り構って貰えないのは寂しいんだぞ?
そっと手を伸ばしてノイエの腕を掴むと、彼女はこっちに顔を向けた。
「なに?」
「ん~」
「?」
首を傾げるノイエがアホ毛を揺らしてからビクッと震わせた。
「する?」
「だから極端」
「なに?」
どうしてノイエさんにはその中間が存在しないのですか?
「ちょっとそこに正座」
「はい」
命じられたノイエが正座する。
「ノイエさん」
「はい」
「どうしてそう極端なのですか?」
「なに?」
「だからするか? しないか?」
「……」
真っ直ぐな目でノイエが僕を見つめる。
「最後はするから」
「だからって」
「なら最初から意思表示?」
「間違ってないけど!」
「嘘はダメ」
「そうだけど!」
「する?」
「……」
気のせいか正論だけでノイエに論破された気がします。
「後で時間に余裕があったらね」
「中途半端は良くない」
「実はノイエの振りした別の人?」
「?」
首を傾げてノイエが立ち上がると、足元に転がっている石を掴んだ。
「アルグ様」
「はい?」
「あれは食べられる?」
「……」
どうやら接近してきているペガサスらしき物をノイエは撃ち落とす気満々らしい。
「ちょっと待ってね」
「はい」
「アテナさ~ん」
「あっはい」
何故か岩陰に居た彼女がこっちにやって来た。
どうして君はあんな場所に隠れていたんですか?
「覗いたら悪いかと思って……それで何でしょうか?」
成人していない女性になんて心配をされているんだか。
「あれって何人乗り?」
「3人までです」
「3人?」
僕。ノイエ。アテナさんで決定か。
ポーラ? あれは勝手に飛んで来るしね。
「ノイエ」
「はい」
「一頭は捕まえて」
「……非常食?」
その発想は僕にはありませんでした。
「後は好きに料理しても良いから一頭は殺さず、」
「焼肉~!」
ノイエの何かを宿した石が真っ直ぐ飛んで行ってペガサスの頭部を貫通した。
胴体と一緒に騎乗している人も落ちるが……あの高さなら打ち所が悪くなければ大丈夫だろう。
「お肉! 焼くの!」
蹴り上げた石を掴んでノイエが次から次へと石を投げる。
気づけば“全て”のペガサスとそれに跨っていた人たちが地面に落ちてピクピクしていた。
「ノイエさん?」
僕の声に彼女がゆっくりと振り返った。
「アルグ様」
「はい」
「止めないとダメ」
「……」
矢継ぎ早に石を投げておいてそんなことを言う?
「とりあえずポーラさん。あっちは任せていい?」
「了解」
何故か流暢な返事をしてポーラが走って行く。
遠ざかる妹と僕らへと視線を巡らせたアテナさんは苦笑いを浮かべてポーラを追った。
僕らの会話に加わるよりもポーラの方が安全だと判断したのか?
「で、ノイエさん」
「はい」
「どうして全部撃ち落としたのかな?」
僕は確かに言いました。『一頭残してね』と。
「アルグ様」
「はい」
「あれが最後なんて聞いてない」
「……」
「おかわり」
「流石に暴論だ~!」
「む」
「何でどうして不機嫌になるのかな?」
「……アルグ様が悪い」
「お~い」
「……」
頬を膨らませたノイエが僕の方を見る。
そして何故か時折チラチラと自分の背後にも視線を向けている。
背後への視線は何だ? ノイエの背後に何が居る?
「なるほどなるほど」
思い出したよこん畜生!
「南無阿弥陀仏。南無妙法蓮華経。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……」
「ん?」
チラチラと背後を見ていたノイエの視線が地面の方へと動いた。効果あったか?
「般若波羅蜜多、蕎麦か蕎麦なのか蕎麦だっだんだ蕎麦か……」
こっちは全然知らないけどそれっぽいことを言えば通じる。
何故ならノイエがしゃがみ込んで虚空をツンツンと指さしていた。
「去れ! 悪魔よ! アーメン。ソーメン。冷や麦。うどんは太さ違い~!」
全力で念を込めてみた。
首を傾げたノイエがゆっくりと僕の方に目を向ける。
「アルグ様」
「ほい」
「ユーが眠そう」
「うむ」
あとは塩でも振りかけてやれば良いのか?
「塩。塩は何処だ?」
「ヘイお待ち」
「よっしゃ」
不意に湧いて出て来た妹の姿をした悪魔から岩塩の塊を受け取り……って石! もうこれはただの石!
「さあ幽霊を撲殺する雄姿を!」
「根性~!」
悪魔に促されるままに石を持ち上げて構える。
と、ノイエが何かを守るように僕の前で両手を広げた。
「イジメないで」
「……」
「ユーはお姉ちゃん」
そう言われると確かにそうなんですけどね。
「アルグ様」
「でも~」
実は前々からこの背後霊な姉はノイエを唆していたのではという僕の不信がね?
「何でも言うこと聞く」
「なら仕方ない」
ユーリカを虐めることに抵抗は無いが、ノイエのお願いに逆らうことは抵抗しかない。
「ならノイエさん」
「はい」
頭上に掲げていた岩塩を放り投げたらポーラが側転を決めて足でキャッチした。で、その足が地面に着くと岩塩の塊が消えていたのです!
もうホラーの領域だな。結構本気で。
「今から僕の言う言葉をそのまま口に……地面に書くからそれ読んで」
「はい」
爪先で地面に文章を書く。
口頭で伝えるのを辞めた理由は簡単だ。ノイエは聞いた傍から忘れる。
「はいどうぞ」
「今度変なことを私に言わせたらユーのことを“大”嫌いになる」
完全な棒読みでノイエがそう宣言した。
「で、ユーリカは?」
「ん?」
僕の問いにノイエが背後を振り返る。視線が静かに地面へと向けられ、
「ユー? ユー?」
慌てた感じで両膝を地面に着いたノイエが何かを抱き起こして声をかける。
うむ。やはりこの姉たちに反省を促すのは、ノイエからの言葉が一番だな。
~あとがき~
ノイエの背には常に背後霊が存在しています。
名前はユーリカ。ノイエの姉の1人です。
実はこの背後霊は最近ノイエに相手されていないのでイライラしていました。
自分は無視されているのに、どこぞの夫は愛されて…許さん。
カウンターを食らって卒倒することになりましたけどねw
よくよく受ける質問のご返事を1つ。
A.どうしたら毎日投稿できるんですか?
Q.寝ずに書け。遊ばず書け。ゲームもせずに書けば良い。
自分の時間を1時間程度執筆にあてれば毎日投稿とかできると思うんですけどね~
© 2022 甲斐八雲
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます