Main Story 26
ノイエに負けた女か
大陸西部・へんた……サツキ村
「あん? この場所には情けない野郎しか居ないのか?」
「「……」」
圧倒的な暴力に晒された人たちが山積みになっている。
最初はちゃんと地面に並べていたのに途中から投げ捨てだした。
あれって下の人たちは大丈夫? あれで死ぬならそれで良し? 良くないでしょう? 死ぬよ?
マックスにイライラしている人物が『煮立った油でもぶっかけろ』とか言っている。
何でも一番最初に負けたモミジさんの叔父さんらしい。あの戦いも無様だったな。
『私がユニバンス王国でどれほどの修行を積んできたのかお見せする日が来たようですね。
さあノイエ様……では無くてそっちのポーラさんにお願いしても良いですか? 小さいな子は卑怯? 気のせいです。何せその子はノイエ様の妹じゃないですか! ユニバンス王国で……何番目ですか? 5本の指に入るぐらい強いですよね? 入らないんですか? 今すぐ入れてください!』などと言い出し実力を見せる場において必死に生き残りを考えていたぐらいだ。
そんな暴挙を絶対に許さない人物がノイエの中に入る。
リスのニクが宝玉を上空に放り投げたら最強たるカミーラが出て来た。ポンっと煙を纏って軽い足取りでだ。
すかさずポーラが最強さまに槍を手渡して……モミジさんは泣きながら土下座した。
『後生です。新婚なのでどうかお許しを!』『知らん。死ななければ良いことだ。簡単だろう?』と言い出して圧倒的な暴力でモミジさんを退治した。
着物姿のモミジさんは暴漢に乱暴された女子のようにボロボロにされて打ち捨てられた。
何故かこっちもボロボロな状態のアーネス君が飛んで来て保護していたけど。
その様子に彼女の叔父さんという人物がキレた。
額に青筋を浮かべてピクピクさせる人を久しぶりに見た。それからは彼の命令で村の猛者たちが襲い掛かる。
けれど大人と子供の喧嘩だ。素人の僕ですらそんな風に見える。
「お姉ちゃん強い」
「だね~」
また圧勝したカミーラにノイエが嬉しそうだ。
フリフリとアホ毛を気分良さそうに動かしている。ただ砂利の上で正座しているのは何故だろう? それがカミーラの戦いを見る正しいスタイルなのかな? やっぱり僕もした方が良い?
ノイエが正座をした時に僕もつられてしようとしたらポーラに止められた。
『今回の兄様は国の代表です。だから人前で正座はダメです』とのことだ。
立って腕を組んで少し胸を張ってカミーラの圧勝劇を見守る偉い人を演じている。
「この馬鹿共が! 次は誰だ!」
叔父さんがイライラしながら……とカミーラがニヤリと笑って僕らの方を見た。
全身から程よい汗を流して準備運動が終わりましたと言いたげだ。
絶対に宜しくない何かを考えていますね? 貴女の今の笑みは正直怖いです。
「ならお前が来いよ」
槍の穂先をこっちに……叔父さんに向けてカミーラが煽りだした。
「偉そうに指示ばかり出してないでお前が来いよ。その腰の物は飾りか? 股間にぶら下げている物も飾りか?」
「……」
おーおー。叔父さんの顔が真っ赤になったね~。
で、ノイエさん。どうして僕の股間を見つめるのですか? これは飾りではないと貴女が一番良く知っていますよね?
カタナに手を置いた叔父さんが前に出ようとして、躓いて顔面から地面に激突した。
辺りに沈黙が広がる。と言うか今のは大丈夫? 顔面から行ったよ?
「ウチの馬鹿が失礼しました」
「おう。ノイエに負けた女か」
「……」
背後から叔父を蹴り倒したモミジさんの姉であるカエデさんから恐ろしい気配が。
確かにカエデさんはノイエに負けている。そうなっている。実際ノイエの体を使って戦ったのはカミーラだけどね。
「どうだい? お前ならそこの地面に転がるクズよりかは楽しめそうだが?」
「このゴミは我が一族で最も弱い恥さらしですので。三歳のモミジに木刀で股間を殴られて以降戦えなくなった弱者です」
「ほう。本当に飾りだったのか……それは済まないことを言った」
「気にしなくても良いです。事実ですので」
ゲシゲシと地面に伏している叔父の尻に蹴りを入れるカエデさんも大概だな。
それにしてもその叔父さん意識あるよね? 色々と再起不能にされて……男性的な機能は不能だっけ? まあ生暖かく見つめてあげよう。
「アルグスタ様」
「ほい?」
叔父を蹴り終えたカエデさんがこっちを見る。
尻が倍ほど膨らんでいるがその叔父は大丈夫か?
「屋敷への案内にモミジを向かわせたはずですが?」
「あ~。村の人たちに自分の実力を披露しようとして失敗してましたね」
「あの馬鹿娘は……」
額に手を当てカエデさんは首を振る。
確かにモミジさんって普通にしてれば普通なんだけど……基本馬鹿な変態だしね。
「で、そこの?」
「何か?」
僕と会話しているカエデさんにカミーラが噛みつく。君は狂犬か?
「私とやるのか? それとも負けを認めるか?」
「……ここだと被害が出るので後で外にて」
「構わんよ」
クルッと槍を回して脇に抱える。
前髪を掻き上げたカミーラに野次馬をしている村の娘たちが沸いた。
「なら休憩だ。酒でも持って来い」
「は~い」
村の娘たちから声が。
おいおい。そんなハーレム野郎は物語の世界にしか存在しないと思っていたぞ。
「まてい!」
野太い声が響いた。
視線を向けたらウチの馬鹿兄貴ぐらい巨躯な野郎が居た。
ただ顔が髭だらけで、野武士というよりもバイキング風に見える。
持っている武器はカタナだと思うけど長くて肉厚な感じだ。それを肩に担いで本当に厳つい。
「ウチのもんを相手にここまでしておいて勝ち逃げか?」
「あん? そこのゴミの山はお前らのあれの指示だ」
面倒臭そうにカミーラが地面に伏す叔父さんに指を向ける。
あっ……叔父さんの名前聞いたんだけど忘れたな。何だっけ? あの物凄く長い名前の一節だったような?
けれどバイキングさんにそれは通じないっぽい。
ゴミの山が問題じゃない。ゴミを作り出したカミーラの行いが問題らしい。まあカミーラが強すぎるんだけどね。
「で、あのヒゲ達磨は?」
「ウチの糞虫の部下だ」
カエデさんが面倒臭そうに答えた。本当に面倒臭そうだ。
もしかしてあれか? この村の四天王的な人物か?
「ちょいと遊んでもらおうか?」
「断るよ」
「なに?」
軽く答えてカミーラは担いでいた槍を放り投げる。
クルクルと周り飛んでいく槍をキャッチしたのはポーラだ。迷うことなくエプロンの裏にスルスルと押し込んでいく。
こっちを見ないでカエデさん。僕にもあのエプロンの謎は謎のままなのです。
「おいチビ」
「はい」
「私は今から地の酒を楽しむ。お前が遊んでやれ……出来ないのか?」
「できます」
できちゃうんだ。ってお~い。ウチのポーラを勝手に舞台上に上げるな。
「こらこらカミーラ」
「あん?」
「……さあポーラ。お前の実力を僕に見せなさい」
決して睨まれて怖気づいたわけではない。ここ重要だ。
スカートを摘まんで一礼したポーラが、スルスルとヒゲ達磨の前へと移動する。
「おい。俺にこんな子供と、」
「あん? お前はそれでも戦士か?」
「何だと?」
立ち去ろうとするカミーラが肩越しに振り返り相手を煽る。
「戦場だったら女子供も関係ない。戦う相手を選んでいる時点でお前は戦場に行く心構えが無い。その飾りの鈍らを捨てて鍬でも持ちな」
「……」
ど正論だったのかヒゲ達磨が押し黙ってカタナを構えた。
対するポーラは……あの銀色の棒はいつも何処から湧いて出るのですか?
「しょうぶです」
「怪我しても恨むなよ」
ヒゲ達磨がポーラに襲い掛かった。
~あとがき~
そして唐突に始まる変態村…サツキ村の物語です。
道中の話は後に語られるか? 真っすぐ向かって来てそうだけどw
強者が居れば湧いてくるのがカミーラです。
そして挑んじゃうのもカミーラです。
で、魔眼の中は…よう知らんw
© 2022 甲斐八雲
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