ある程度謎が解けたわ
ユニバンス王国・王都郊外ドラグナイト邸
「今日の私は機嫌が良い。大変に良い。よって最初はホリーに譲ってあげるよ」
「レニーラ。どうしたの? 頭の中が狂ってる?」
「ちょっと待ってよ! 私が優しさを発揮して譲ったのにそれは何!」
「……そうね。レニーラは馬鹿だからちゃんと言葉で伝えないと分からないのね」
「だから何よ!」
「何よって……アルグちゃんは私のモノなのだから後とか先とか無いの。ずっと私が独占するのよ」
「そう言うことかホリー」
「ええそうよ」
「死にさらせ! この精神病んでる馬鹿がっ!」
「今日が貴女の命日よ! ただの馬鹿っ!」
取っ組み合いの喧嘩が始まった。
レニーラはベリーダンサーのような服に戻っている。ホリーの掴み攻撃で豊かな胸が露わになった。
ホリーは街娘のような服に戻っている。レニーラの引っ張り攻撃で豊かなお尻が露わになった。
普段なら眼福だろう。だが今の僕には死活問題だ。逃げねばならん。
ベッドの上で手足を拘束された僕は文字通りまな板の上の鯉だ。調理人に捌かれる運命の可哀そうな存在だ。必死に逃れようとするけどかなり難しい。
口には猿ぐつわまで嚙まされているので声も出せない。
陸揚げされたエビのようにビチビチと動いて必死に逃げる。
と、僕の体を跨ったノイエが覗き込んで来る。姉たちのキャットファイトに飽きた様子だ。
「アルグ様」
「ふぁに?」
「……」
スッとノイエの視線が下を向く。しばらく視線を固定してからまた僕を見る。
「するから」
「む~!」
色々な何かをすっ飛ばして最初はどうやらノイエに決まった。
「聞いてよレニーラ」
「なに?」
ゴクゴクと喉を鳴らして給水していたレニーラがこっちを見る。
スラっとした裸体は本当に芸術的なほどに美しい。ボンキュッボンのナイスバディだ。
健全で元気な野郎が見れば全力で襲い掛かりたくなるほどの誘惑だ。脳死する。
「僕だって人間なんだよ? 生きているんだよ?」
「だね~」
「それなのにこの扱いは酷いと思うんだけど!」
ジタバタと体を揺すって抗議する。結局手足の拘束はそのままだよ!
必死に逃れようとするが、一息ついたらしいレニーラが軽く足を動かしまたベッドに戻って来た。
「旦那君」
「はい?」
ビシッと全裸のレニーラが僕を指さす。
プルンと美味しそうな胸が揺れたが、今はぶっちゃけ恐怖の対象だ。
「今日の……もう昨日かな? まあ私は頑張った。頑張りました」
「それで?」
「頑張りすぎた私はへとへとなのです」
ほほう。不思議なことを言う。
そんなへとへとな人が拘束した僕の上に跨り2回も踊るのか?
「それで?」
「うむ」
腕を組んで胸を強調しながらレニーラがうんうんと頷く。
「だから旦那君から栄養を補給するのだ~」
「3度目に続くの~!」
「お姉ちゃん」
「大丈夫よアルグちゃん。あの馬鹿はノイエとお風呂だから」
「……」
大丈夫じゃない。
ノイエと食事に行って戻って来たお姉ちゃんの雰囲気は尋常じゃない。
「それでアルグちゃん」
「ふぁい」
「私が食事に行ってる間にレニーラと何回したのかしら?」
優しい口調なのに目が笑ってない。
「お姉ちゃんと同じだけです」
「そう。分かったわ」
スルスルとお姉ちゃんが服を脱ぎだし……立派な胸が姿を現した。
僕が最後に見るのが、きっとこの胸になるのかもしれない。
「なら同じ数だけ今からして上書きしてあげるから」
「本気で死んじゃうから~!」
「アルグ様?」
「もう許して下さい。許してください。本当にごめんなさい」
「……」
必死に謝る僕に対してノイエが手を伸ばし頭を撫でてくれる。
やはりノイエは優しいんだ。
凶悪な姉たちは一休みらしい。一休みって何さ? あれだけしておいてまだ満足してないの? 正直痛いほどに辛いんですけど? 分かる? ねえ?
ソファーに座ってワインを飲んでいる姉2人から視線を外して愛しい妻を見る。
僕の癒しはやはりノイエだ。愛しています。誰よりもノイエのことを。
何故かほんのりノイエが頬を赤くして、拘束されたままの僕の頭を抱えて持ち上げて膝枕をしてくれる。
優しいお嫁さんに感謝です!
「アルグ様」
「なに?」
愛しいノイエの言葉なら僕は何でも聞きましょう。
「……もう一度」
ノイエも実は悪魔の子だったのか~!
カラカラのカサカサになった僕は、ベッドの上で即身成仏のように干乾びている気がする。
斬新なミイラの作り方だ。男としては幸せな地獄だろう。
僕にトドメを刺したノイエは軽い足取りで姉たちの元へ遊びに行った。
ワイングラスを傾けて英気を養っている姉たちに合流し……ちょっと待て。これ以上僕から搾り取る気か? 本当に死ぬぞ?
「お姉ちゃん」
「なに?」
「踊って」
ノイエがレニーラに抱き着いて甘えてみせる。
「ノイエ」
「なに?」
「今踊ったら色々と出ちゃうから」
「大丈夫」
何が?
「小さい子が掃除する」
ノイエさんノイエさん? ポーラは何故か現在ベッドの上の住人だよ? 全身筋肉痛っぽい感じになってミネルバさんが発狂してたんだからね? それを理解してますか?
してないですね。知ってます。
「踊って」
「はいはい。本当にノイエは我が儘なんだから」
慣れた感じでレニーラが、ノイエの頭を撫でて座っていたソファーから立ち上がる。
色々と出ちゃう人がソファーに座ってワインを味わっていないでください。掃除するのはポーラなんだからね?
「でも音が無いのよね」
クルっと全裸のレニーラが回って見せた。
簡単にやって見せているけどあれって簡単なのかな?
「大丈夫」
「何が?」
「歌うから」
スッとノイエが息を飲み、ゆっくりと声を放つ。
ノイエの地声は奇麗だ。とても澄んでいて……ただ抑揚が無いので一本調子になる。ぶっちゃけて言えば棒読みだ。
けれど今日のノイエはちゃんとした歌を紡ぐ。
師であるセシリーンにはやはり遠く及ばないが、それでも奇麗な音が広がっていく。
こうなるとどこぞの舞姫は、疲労困憊とか言う言葉を忘れて踊り出す。踊り続ける。レニーラの体力は底なしなのか?
あんな化け物を相手にしていたら僕が死ぬ。
「アルグちゃん」
「ふぁい?」
必死に逃げようと足掻いていた僕の横に歩いて来たホリーが座った。
やはり逃げられないのか? 今日が僕の命日なのか?
「ようやくゆっくりと、踊りと歌を堪能できるわ」
ワイングラスを手にしたホリーが柔らかく笑う。
舞台の進行をしていたホリーは見ている暇など無かったのだろうな。
そう言うレニーラも……と言うか進行と演者は舞台など見ている暇もないだろう。
「ねえアルグちゃん」
「ん?」
ワイングラスをサイドボードの上に置いてホリーが僕に寄りかかり枕にする。
出来たらそろそろ手足の拘束を解いて欲しい。僕はこの手のプレイで燃えたりしない。
……ホントウダヨ? ウソジャナイヨ?
「良いわよね。家族でこんな風にのんびり出来るだなんて」
「そうだね」
のんびりして居るなら良い。僕は終始搾取され続けていて限界だ。
「ねえアルグちゃん」
「ほい?」
「ホムンクルスって知ってる?」
「ああ。あれね。錬金術師が作り出す人工生命体で良いのかな? 人工的に人を作る技術だね」
僕の知識だとそんな感じですが?
ただ僕の返事を聞いたホリーの目がギラッと光った。
「人工的に?」
「そのはずだけど?」
「そっか……そう言うことか」
何故か喉の奥でクツクツと笑いだした。めっちゃ怖い。
「ある程度謎が解けたわ」
何だって!
「だからご褒美」
「ちょ、ま~!」
勝手に完結したホリーに再度襲われた。
ハッとして目が覚めたら数日が過ぎていた。
悪い夢かと思ったが、僕の腰は致命的なダメージが。
あれは事実だったのか?
怖い……怖いよう。姉たちが怖いのです。本当に。
~あとがき~
ある程度謎が解けました。
そしてアルグスタの腰には大ダメージが。
レニーラとホリーが相手だとこんな物でしょう。
これにて鎮魂祭編は終わりです。
次話は…いつものヤツをお送りしようと思いましたが、新キャラが名前しか出ていない罠!
なので提案されていた製作中の人物一覧を上げます。お楽しみに
(C) 2021 甲斐八雲
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます