魂など全プッシュで行け
「良し。全部融かしてしまいましょう」
「ノイエっ」
「はい」
ギュッとノイエがアイルローゼを抱きしめる。背中から腕を回してだ。
流石の先生も妹の制止は振りほどかないらしい。顔を真っ赤にさせたままだけど暴れない。
「刻印の魔女が作ったという典型的な『面白箱』みたいね」
「ほほう。それは?」
僕の隣に居るおチビなメイドが偉そうに踏ん反り返っていた。
「刻印の魔女が少年兵たちの育成のために作った罠だらけの通路の名称よ。四角い箱を何個も連ねて罠だらけの通路を作るの。で、それを突破出来た者にはご褒美かな?」
「つまりあの性悪最低魔女が作った見て楽しむ施設か」
「言葉に気を付けなさいよ?」
必死に通路の罠解除をしているバローズさんとその手伝いをしているフレアさんを尻目に、僕らは解除までに発動する罠により弄ばれていた。
何でもこの罠に殺傷性の仕掛けは無いらしい。だから『面白箱』なのだ。
「本来は子供たちが笑いながら遊びつつ鍛錬できるようにと作ったんだけどね~」
クルクルと回りながら移動した馬鹿の様子に僕も移動する。
ちょうど僕等が居た場所に目掛けて巨大ハリセンが天井から落ちてきて突風を生み出す。
「きゃぁぁあああ~!」
女性の悲鳴が“また”木霊した。
増々顔を真っ赤にした先生がスカートを押さえてプルプルと震えている。
もう隠さなくても良いんじゃないですか? 形状も色も僕の脳裏に焼き付けてありますから。
何より先生のお尻の形が絶品だとも知りました。
気付くべきでした。足が奇麗と言うことはそれの根元であるお尻も奇麗な形をしているのだという事実に。骨盤のバランスが良いと言うのか歪みが無いと言うのか。
あっまた突風が。
「いやぁぁぁあああ~」
前を押さえていたら今度は後ろからだ。
ヒラヒラと左右に大きく揺れるスカートによって、黒い下着越しの先生のナイスなヒップが露わに!
「安産型の良いお尻よね」
「お願いだからポーラの姿でそんなことを言わないで」
「でもキュッとお尻が上向きで、ご主人様のお嫁さんも良い形をしているけど……姉さま。兄様がお尻を見たいって」
「はい」
迷うことなくワンピースのような服のスカートを捲ってノイエが自分のお尻を晒す。
本日の下着は桃色の普通のヤツです。でも白い桃を包む桃色がとってもエロイのです。
はっ!
「ノイエ~。もう降ろして良いからね」
「……」
お尻を見せながらにじり寄って来るお嫁さんに気づいてブレーキをかける。
危ない。ノイエがその気になったら、このままR18の世界に突入だよ。
「見たでしょう? 魔女のお尻は骨盤レベルの生まれ持った素質なのよ。比べて姉さまのお尻はこれ以上鍛えても上向かない。悲しいことに魔女の領域には届かないのよ」
「にゃあぁぁああ~!」
上から落ちて来た縄の罠を回避した先生だったが、運悪くその縄が上半身に纏わりついた。
で、そこにまたハリセンが突風を……もう足とお尻の素晴らしい画像で僕の頭の容量が足りません。外付けの何かをください。
「足とお尻に関して言えば、あの魔女は今まで見てきた全ての素材の中で1番ね」
「そうっすか~」
長き時を生きる馬鹿賢者のお墨付きを得た先生の足とお尻は凄いらしい。
「で、そろそろ聞いても良い?」
「何かしら?」
「実はあの罠って遠隔で動かしてない?」
先ほどから先生ばかりピンポイントで攻撃している気がするのです。
しかしウチの愛らしい妹様は何故かモジモジと恥じらいだした。
「……わたしポーラ。12さい。むずかしいことはわからないの」
「そっか~なら仕方ないよね」
愛らしい笑みを浮かべてそう言ってくる妹の言葉に嘘は無いのだろう。
また落ちて来たハリセンで、今度は先生のスカートの全面が舞う。たぶんこのペースで行くと今日中に僕の何かが許容範囲を越えそうだ。
それから何度も先生がキレては魔法を使おうとする。その度に僕はノイエに命じて制止させた。親でも殺しそうなほど怒り狂う先生を尻目に僕の頭は桃色の映像でパンク寸前です。
バローズさんとフレアさんは一生懸命に罠の解除を進め……体感時間で2時間くらいか? 僕らは面白箱の最終部屋に到着した。
けれどまさかあんな罠が待っていただなんて……
「ノイエ……」
「お姉ちゃん」
サッと両手を広げ迎え入れる姿勢のノイエに、下着の紐を直した先生が縋り付く。
最後のは凄かった。まさか先生の下着が取れてしまうとは……ただ見えたのはお尻だ。後ろからだった。
「ふむ。腕が鈍ったわね」
何の腕が鈍ったのか謎だが、最後の罠の出来に馬鹿賢者が不満げだ。
釣り針と釣り糸でスカートを捲り下着の紐を解いておきながら、その神業をして腕が鈍ったって……それ以上の腕があったら何が起こっていたのかを僕は知りたい。たぶん良い子には見せられないアダルトな物だろう。けれど僕はアダルトなので見ても良いはずだ。
「もう大丈夫です。解除できました」
「そうっすか~」
報告に来たフレアさんが僕らを見て首を傾げる。
可愛らしい妹はドクロ水晶を首に下げ、抱き合う姉と先生を見つめている。
ノイエは先生をギュッと抱きしめ、アイルローゼはシクシクと泣きながら妹に甘えていた。
そして僕は溢れてしまいそうな鼻血的な物を我慢していた。それほどに最後は凄かったのだ。
「えっと……先生に何が?」
「見てなかったの?」
「はい。アイルローゼ先生の悲鳴は聞こえてましたが、解除の手伝いをしていましたので」
たぶん悲鳴が聞こえてくるから頑張ったのだろう。師匠思いの弟子だ。僕ですか? とても師匠を思っていました。思いすぎて終始熱く見守っていました。熱すぎました。
若干疲れた様子に見えるフレアさんだが、それもそのはず。ずっと頭を使い続けていたのだ。
解除と言っても6×6の移動式パズルを組み替えて正しい位置に戻すゲームみたいなもの。バローズさんは解除された状態のパズルの配置をすべて覚えていて、2人はパズルを解くことに専念し僕らが罠を引き受けていた。
本来なら知的ゲームか大好きなアイルローゼの出番のはずなのだが、そこは馬鹿賢者が許さなかった。つまりあれは先生で遊ぶ気だったのだ。
僕の記憶領域は大変なことになっている。目を瞑ると素晴らしい足とお尻が瞼の裏を舞う。
「……どうして人の記憶って色あせていくんだろうね」
目を閉じて僕はそっと呟いていた。
だって今見た素晴らしい記憶たちもいつかは消えていくのだ。何と悲しい現実だろう。永久に美しくと女性が望む気持ちが良く分かる。
「だから人は記録装置を作ったのよ」
「そっか」
僕の呟きにポーラの優しくて愛らしい声が帰って来た。
やはり僕には強い味方が居たらしい。
「それって本当に記録装置だったんだ」
「当り前でしょう? 今日の日の為に突貫で作ったわ!」
そっと目を開いて僕は隣を見る。
神々しさすら覚える偉大なる三大魔女の御一方が妹の姿でその場に佇んでいらした。
「偉大なる御方よ」
「何かしら?」
「……その装置って複数作れますか? それと譲っていただけますか? レンタルも有で」
「条件次第ね」
「どんなことでしょうか?」
「私の協力をしなさい。始祖の馬鹿を殴り飛ばす協力を」
はっきりとそう告げて来た。
そんな無理難題を僕にどうしろと? 返事など最初から決まっている。
ゆっくりと歩いてポーラの前で跪く。
「このアルグスタ……貴女様の願いを叶えるために粉骨砕身頑張ることを誓います」
差し出された彼女の手を取りその甲にキスをする。
僕はこの日……記録装置の為に悪魔に魂を売り渡しました。だってこれからは録画し放題なんだよ? 魂ぐらい売るでしょ?
「なら初めに本日の映像は?」
「ん~。後日2人っきりで鑑賞会をしましょうか? それととっておきの記録もあるんだけど?」
「とっておき?」
何となくゴクリと僕は唾を飲みこんでいた。
勘がする。第六感が告げてくる。魂など全プッシュで行けと。
「どうかしら? 凄いわよ?」
ニタリと笑う魔女と僕は固い握手を交わした。
ジッとフレアは馬鹿なことをしている兄と妹に目を向け……盛大なため息を吐いた。
こんな人物を亡き者にしようと頑張っている大国の人たちがある意味で可哀そうに思えたからだ。
~あとがき~
刻印さん作の面白箱は、少年兵の育成のために作られた練習道具です。
発掘されればそこそこの値段で魔法研究する組織が買い取るほどの一品です。
で、もちろん作った本人は色々と遠隔で細工が出来ます。
ええ出来ます。だからするのです。何故ならそこに楽しい素材が居るから!
弄ばれてアイルローゼの精神的ダメージはレッドゲージに突入しましたw
(C) 2021 甲斐八雲
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