異世界に行く方法その82

 雪が積もるとあるあるの光景。



「こ、こぞー! 精霊王……異世界だっ!」



 アズリタンはまだ眠る宗麟の布団の上に乗るとゆっさゆっさと宗麟を揺さぶる。そしてゆっくりと目が醒める宗麟。



「魔王サマどないしてん?」

「どないしてん? ではなぁい! 外を見て見よ!」



 顔がくっつくくらいアズリタンが近づけて叫ぶので宗麟はアズリタンの首ねっこを掴むと持ち上げる。



「まぁテンションあがってるところ悪いけどどこか?」



 宗麟にどかされ、欠伸をしながらも起きた宗麟に満足すると次は精霊王ツィタニアの頬をぺしぺしと叩きながらアズリタンは言う。



「精霊王起きよ! 白銀世界である! 余達は今、別世界にやってきておる!」

「なんです魔王? 別世界と言いましたか?」



 宗麟とは違い喰いつくツィタニアにアズリタンはフフンと笑って部室のカーテンを開けた。誇らしげにこういう。

「見て見るがよい! 寝て起きると余達は別世界への転移に成功しよった。白き清浄なる世界。余の力で漆黒に染めてやりたいわ! ……ん? どうした精霊王よ。あまりの事に言葉が出んか?」



 そう、アズリタンの言う異世界とは雪景色の事である。それを見てツィタニアは心底がっかりした。



「ただの雪じゃないですか……寝ます」



 そう言って再び布団にもぐりこもうとするツィタニアを引っ張り出すアズリタン。寒い布団の外に出されてツィタニアは若干ご機嫌が斜めになる。



「何するんですか! 魔王! 寒いでしょうに!」

「精霊王、外に行こう! どうも余はあの白い何かを触らねばならぬと心が叫んでおる!」



 雪をはじめて見た子供のような反応。今すぐに飛び出していこうとするアズリタンの首根っこを宗麟は掴む。



「あぅ……何をする小僧!」

「いや、そのまま行くと風邪ひいて即死コースや! この装備を魔王サマに授けよう」



 手袋にマフラー、毛糸の帽子にコート。全てこんな時の為にメルカリで購入した雪遊び初級セットそれを身に付けたアズリタンは温かさに満足した。



「小僧、よくやった! これならちっとも寒くはないわ、それ行くぞ精霊王よ!」

「寒いのは苦手です! やめてください!」



 そんな精霊王に宗麟は紙袋を渡した。同じく防寒着。しぶしぶそれを来て二人は誰もいない雪の積もった運動場に飛び出していく。最初は雪に触れて、珍しそうにしていたが、突如としてアズリタンが雪玉をツィタニアにぶつけた。


 しばらく仕返しにツィタニアも雪玉を投げ返していたが、飽きたのか次は巨大な雪玉を作り出し、雪だるまを作り出す。世界は違えど考える事は違うのだなと思いながら宗麟は、ゆであずきの缶詰を二個取り出して、ぜんざいを作り始めた。二人は戻ってくる頃にはしもやけとそして強烈な寒さに凍えているだろうと、宗麟の世界における異世界感をたっぷりと感じてもらう事にした。

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