異世界に行く方法その81

「精霊王サマ、魔王サマの具合どないや?」

「それが熱が全然下がりません」



 本日、朝登校した際、精霊王ツィタニアが走ってきて宗麟に魔王アズリタンの具合が悪いと話した。食欲がなく、顔を赤らめて横になるアズリタンを見て、保健室から解熱剤と経口補水液を貰い、それで様子を見ていたが、放課後アズリタンの容態はさらに悪くなっていた。体温計を保健室から借りてきた宗麟はアズリタンの耳の中にそれを入れてスイッチを押した。



「四十二度。これ、ふつうの人間なら余裕で死ねる奴やな。魔王サマ。意識あるか?」



 宗麟がそう言って頬を優しくペシペシと叩く。するとアズリタンは半目で宗麟を見て弱弱しく頷く。



「とりあえずまだ大丈夫そうやな。医者いこか? 精霊王サマちょっと留守頼むわ」

「分かりました。お気をつけて、あと魔王を宜しくお願いします」



 そう言ってアズリタンを宗麟は背負う。アズリタンには温かい服を重ね着させ、そしてスマホでタクシーを呼ぶ。学校より少し離れたところにタクシーを止めてもらい宗麟の膝を枕にアズリタンを横にさせた。



「余が死ねば精霊王は喜ぶであろうな?」

「馬鹿いいなや。 悲しむやろ」

「……くはは、異なる事を吼えよる……余と奴は怨敵どうしよ……」

「お前らの世界ではな? 俺の世界では友達やろ? あんま喋らずに楽にしとき。あとなんか欲しいもんとかないか? 食べたいもんとか」

「山ほど生ハムが食いたいなっ!」

「原木でこうたる。だから少し眠とき」



 アズリタンは言われるがままに目を瞑り、そして口元のみ笑わせると呟く。



「余に友などおるものか」



 そんなアズリタンの鼻をちょんと触ると宗麟は笑う。



「俺と、精霊王サマと……あと学園の皆は多分魔王サマの友達や」



 それを聞いてアズリタンは口をへの字にするとわざとらしい寝息を立てて宗麟との会話を強制終了した。

 大学病院に行くや、アズリタンの身分証明になる物がない為、全額負担になる事を宗麟は告げられるが、宗麟はそれに笑う。



「まぁ、俺が勝手にこの世界に呼んでもうたからな。いくらかかってもええから、魔王サマを治したって」 



 解熱鎮痛剤を打たれ、アズリタンの顔色は段々とよくなった。医者いわく、ウィルス性の発熱だったとのことで処方箋を渡された。宗麟に医者は鋭い質問を投げかけた。



「この子は何人かな?」

「異世界人や」



 宗麟の正直な回答にふふっと医者は笑う。宗麟は財布から一万円札を二、三枚取り出すとそれで支払いスポーツドリンクにプリンと桃缶を購入。アマゾンで生ハムの原木をぽちって、ウーバーイーツで弁当を二個購入し、学園に戻った。

 心配していたツィタニアもアズリタンが安静を取り戻した事に安堵し、ちょうど届いた弁当を美味しそうに頬張る。そこで宗麟はツィタニアに聞いた。



「なぁ? なんで魔王サマと精霊王サマは戦争しとるんや?」



 この日、宗麟にとって異世界に行く理由が出来た。

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