異世界に行く方法その79

 それは、女子達の楽しいイベントであり、男子に完全にマウントをとり1日主導権を握る。否。生殺与奪件を持つ日である。

 それを、バレンタイン・オブザ・デットと呼ぶ。もらえるハズもないのに、朝シャンをして、普段つけてこない香水やオーデコロンをつけ、初めてのデートに行く童貞の如き全力の準備を男子たちは行う。

 そして、我らがオカルト研究部部長の鳴宮宗麟にとっては関係のないイベントであると思われていた。そう、故にいつも通り、白衣を着て、いつも通り異世界の精霊王と異世界の魔王のいるオカルト研究部部室との往復生活のハズであった。



「精霊王サマ、魔王サマ。見てくれ……俺に放課後用事がある子がいるらしんや!」



 ランチタイム中に宗麟は焦りと喜びをかんじさせるそんな顔で二人にバレンタインとは何かを説明した。



「成程、甘く狂おしいチョコレートを雌の人種から雄の人種へと献上し、つがいが出来ると……物で釣るというのがなんともいたたまれんな」

「確かに、魔王の言う通りですね。本当の愛があればそんなチョコレートなんていらないでしょうに」

「ちゃうやん! 今まで俺の事を陰から観てたけど告白できひんかっためっちゃ可愛い女の子がやで? 今日勇気出して告白してくるわけやん? だからどうしよ? って相談しとるんやろが」

「そもそも、可愛い女の子って何故に分かるのだ? 頭が悪くなったか小僧?」

「俺の事好きになる女子なんて可愛い意外ありえへんやろ!」



 信じられない程宗麟の頭の中はお花畑だった。というか舞い上がってた。そんな宗麟に精霊王ツィタニアと魔王アズリタンは顔を見合わせて渋い顔をする。



「のぉ、小僧。今日の夕餉の話でもせんか?」

「夕飯な? これでなんかうまいもんでも食ってくれや!」



 そう言って差し出される千円札。



「小僧これは?」

「いや、告白されるやろ? で、そのまま下校デートやん? そしたら二人に時間つかってられへんし、まぁそういう事や……あと、二人を異世界に行かせる事が遅れるかもしれへんなぁ!」



 聞き捨てならない事を言う宗麟。



「宗麟。その心は?」

「精霊王サマ、皆までいうなや! 彼女が他の女の子と遊んどる俺みて嫉妬したらあかんやん? それくらい気つかってぇや」



 ヘラヘラと笑う宗麟を見て、ツィタニアはアズリタンに耳打ちする。



「あれどうするんですか?」

「余に聞くな! あそこまで舞い上がるとは思わなんだ」

「こうなったらせーので謝りましょう。せーの!」



 宗麟は全貌を知る事になる。ツィタニアとアズリタンのでっちあげというか悪戯。すぐに気づいて苦笑で終わるとそう思っていた事。それを聞いて宗麟は静かに部室においてあるロープをくくって天井からつるした。



「じゃあ、精霊王サマと魔王サマ。先、異世界行ってくるわ」

「はやまるなぁこぞぉお!」

「そうですよぅ! 私達が悪かったですからぁ!」



 バレンタインで男の子をおちょくってはいけない。本当に異世界に行ってしまう可能性がある。

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