異世界に行く方法その76

 引き続き宗麟達は電車に乗り継ぎうろうろしている。駅員達はまたあの実験をしているのかと呆れ顔で三人を見送る。



「もっかい東西線で茅場町駅に行くでぇ!」



  そこで降りて改札をくぐる。三人は一列に並びアビーロードのようにドラクエ歩きを決める。そして宗麟は鞄からおもむろにビニール袋に入ったお米を見せる。



「なんだ糒か? こぞぉ」

「むしろ、なんで魔王サマはそんな言葉知っとんねん!」

「貴様が勉学に励んでいる間、余も何もしておらんわけではない。時代劇とやらにはまっておっての!」



 そう言ってえいやぁとアズリタンは殺陣の真似事をやってのけるので、宗麟は世界共通どころか、異世界ですら日本のサムライは魅了してしまうのかと感慨深さを感じつつもツィタニアとアズリタンに米粒を配る。



「しかし、宗麟なんです? 年の数だけ食べるんですか?」

「いや、4Aの出口の階段に10粒置いていくんや」

「こぞう、貴様もったいなかろう! ネズミやアリに餌を与えるつもりか?」



 アズリタンに言われるとぶっ飛ばしたくなる気持ちを抑えてから宗麟は二人に言う。



「異世界に行く為の儀式の一つや。次の電車乗るで! 日比谷線から築地に行くで!」



 滅茶苦茶元気な宗麟にアズリタンは肩でため息をつくと手袋をつけた手を宗麟に手を出す。それに宗麟は迷子にならないようにとアズリタンの手を繋ぐ。



「全く、魔王は甘えん坊ですね! 宗麟、空いている手を私が握ってあげましょう」

「あ? 精霊王サマも迷子よけかいな。まぁええけど」



 三人で手を繋ぎながら駅のホームを歩き、そして次の電車に乗る。何故二人と手を繋いで歩いているのやら宗麟はわらけて来た。昔、妹が小さかった時、こうしてあるいた事があったなと……そう、宗麟の両手は今日のように塞がっていた。妹ではない方の手を繋いでいたのは誰だっただろう?

 そこで宗麟は思い出す。



「そうか、俺がオカルトに目覚めたりしたんは……もう一度会いたかったからか……」

「誰にです?」

「昔な……仲良かった奴がおってん」

「今はどこにおるのだ?」

「空の星や。ほらおセンチになってないで、仕上げにいくで築地で降りたら築地本願寺方面の鉄格子や」



 そこにも当然のように盛り塩がある。それを宗麟は足で散らした。そして再び日比谷線に乗れば儀式は完了する。



「ほな、二人とも。一番した事を想って、両手を組んで電車に乗るんや! ええな? せーの!」



 三人は電車に乗る。宗麟は目を開けたそこで、黒髪の美少女と出会った。



「お前……もしかして」



 宗麟が名前を言おうとした時、少女は宗麟の唇に指で触れて首を横に振った。そしてこういう。



「そう君。もう頑張らなくていいんだよ?」



 宗麟は鼻で笑う。



「アホいいなや。こうしてお前とも会えた、あの馬鹿二人を元の世界に戻すまでは頑張らなあかんやろ?」



 宗麟がそういうと少女はクスクスと笑う。宗麟ははっ! と目が覚めた。



「こぞぉー大丈夫か? 精霊王、気がついたぞ」

「宗麟、貧血ですか? 電車にのるや倒れてしまいました」



 宗麟は、二人の頭を撫でると笑う。



「まぁ、今回は失敗やな」

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