異世界に行く方法その73

「アズリちゃん、一緒に隠れよう」

「うむ、まぁそんなに急ぐなマリコ。ころぶぞ! 魔法が使えれば隠れずとも姿を消す事くらい容易いのだがな……」



 魔王アズリタンは宗麟が学校で授業を受けている間、トイレに行くと嘘をついて学校を飛び出した。そして偶然みつけた公園で遊んでいる子供達を見つける。見た目はアズリタンと同じくらい、年齢はアズリタンの20万12歳から20万を引いたくらいの年齢だった。そして彼ら、彼女らはかくれんぼなる遊戯をしていた。

 それをなんとなく見つめていると女子ながらリーダーのように皆を導き、とてもやさしい少女マリコがアズリタンを仲間に入れてくれ、今に至るというわけだった。

 入り組んだ遊具の中に隠れながら様子をうかがっているマリコを見てアズリタンは独り言をつぶやく。



「人間の子供はこんな年はもいかぬ頃から、逃避の為の訓練をしておるのか、この世界あなどれんな。あのこぞぉーに至っては魔導書すら扱いよる……」

「どうしたのアズリちゃん?」

「ん? 余の元の世界に戻る方法を考えておってな。マリコ、貴様は賢い子だ。知らぬか? 誰も知らぬ場所への行き方になるのだがな」



 アズリタンはこのマリコがそんな答えを持ち合わせているとは思っていなかったから、彼女がこう呟いた事に驚愕する。



「もしかして……あそこかな?」

「知っておるのか、マリコ? 教えておくれ? 余は戻りたいのだ」

「うん……でもいいのかな」

「よいに決まっておろう! これは僥倖! 精霊王の奴にも教えて……いや、奴は余の敵、教える必要もなかろう! 元の世界に戻って奴の仲間を消し炭にしてやるわぁ」



 テンション爆上げでアズリタンはマリコについていく、彼女がつれてきてくれたのは裏山にある木の上に作られた小屋。

 所謂。秘密基地。

 そこにはお菓子やおもちゃや漫画……そして大人が見るような雑誌が所せましと置いてある。



「なんぞこれは? 人間の女が裸で交尾か?」

「やっ! アズリちゃん、そんなの見ちゃダメ! 捨てちゃお!」



 そう言って所謂エロ本をマリコは秘密基地から全て捨て落とした。皆の知らない場所、それを秘密基地を思ったマリコだったが、アズリタンの思う異世界への扉ではない。そんなところに居座ってもあまり意味がないのでアズリタンはマリコにこう話す。



「そろそろ日も暮れてきたしの、帰ろうかの?」

「うん! アズリちゃん、あのね?」

「どうした?」

「私、いつも男の子とばかり遊んでいるから女の子の友達って少ないんだ! だから、また一緒に遊ぼうね!」



 友達になろうと言うマリコの提案にアズリタンは笑った。



「余は忙しいからの、たまにならそうだな。考えてやらんこともない」



 その言葉に喜んだマリコと別れるとアズリタンは宗麟の高校の部室に戻る。そこでジャムパンを食べているツィタニアと宗麟を見て叫んだ。



「余の分は?」

「は? というか、魔王サマどこ行っててん、一人で出歩くな言うたやろ? オヤツ抜きや!」

「そんな! こぞう、それはごしょうだ!」



 子供は一人で出歩いてはいけない。それそのものが異世界への扉になるのだ。

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