異世界に行く方法その71

「そっち、海老天揚がったかぁ?」



 宗麟はソバをゆでている鍋を見ながら、少し離れたところで天ぷらに悪戦苦闘している精霊王ツィタニアと、縄でぐるぐる巻きにされて身動きの取れない魔王アズリタンの姿。



「この縄をとけぇえええい!」

「魔王サマ、年越しそばができたら解いたるから少し静かにしときや! つまみ食いばっかりしよるから全然できへんやろ。年の瀬にこれ食わへんかったら魔王サマ、死ぬぞ。いや、この場合は滅びると言った方がええんか?」



 魔王アズリタンは死ぬという事に関してはなんとお反応しなかったが、滅びるという言葉に関しては違った。



「ば、馬鹿を言うでないこぞぉー! 余がそんな物を喰わんだけで滅びるわけがなかろう。……なぁ? そうだよの?」



 あからさまにビビっているアズリタンに宗麟は鰹節を鍋に入れてダシを取りながらそれに返事を返した。



「まぁええけど、魔王サマがそれで滅んでも俺には関係ないしな。なら縄を解いてやるから好きに邪魔したらええんちゃう?」

「黙れこぞう!」

「シシ神の森におる奴みたいになっとるぞ魔王サマ、でどうするん? 年越しそば食べるん? 食べへんの?」

「そもそもその年越しソバとやら、どう見ても普通の食い物にしか見えんが、貴様が余と精霊王を呼ぶという事はkれも異世界に行く為の方法ではないのか?」



 アズリタンの質問は近からずとも遠からずと言ったところだった。部活の合宿申請をして先ほど、オードブルの盛り合わせを食べてそろそろ寝ようかという時間帯に宗麟は夜食でも食べる気なのかとアズリタンとツィタニアは考えていた。



「よもつえ食いという言葉が俺の世界にはあるんだがな」

「「よもつえぐい?」」

「あぁ、よその世界の食べ物を食べるとその世界から出られなくなるっちゅー話があんねんな? パターンは色々あるけど」



 それを聞いて驚くのは二人、普段は食っちゃ寝、食っちゃ寝している二人はもはやこの世界から出られない。



「宗麟、それって……」

「こ、こぞおぉおお! 貴様はかったなぁ!」

「いや、食わへんんと死んでまうやろ。この年越しそばは、細く長いやろ? 長生きしましょーねっていう願掛けや。というか縁起物やから二人に食ってもらってやな! 来年も全力で異世界行く方法を考えましょーや! というこっちゃな」



 ツィタニアが作った海老天を宗麟が茹でたソバに盛り付け、かまぼことネギを乗せ三人分を用意すると三人並んで手を合わせた。

 いただきます。

 食べ終わる頃に、遠くで鐘の音がボーンと鳴った。2019年もこれで終わり、来年から新しい異世界に行く方法を考えないといけないなと宗麟はソバの汁を飲み干した。

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