異世界に行く方法その69

「はい、まず精霊王サマ」



 精霊王ツィタニアと魔王アズリタンは封筒を持つ宗麟の前に並んでいた。そう、今日は戸籍を持たないツィタニアとアズリタンが宗麟が持ってきた謎の内職を繰り返し、その給料が払われる日なのだ。



「魔王、労働の喜びを感じられる瞬間ですねぇ!」

「うむ、なんど手をあのチクチクした針で怪我した事か……その度に小僧にマキロンとオロナインを買いに行かせたがのっ! 余があれだけの苦労をしたのは勇者一行と交戦した時くらいなのだからなっ!」



 普段から意外と仲の良い二人だが、今回は給料が支払われるという事でいつも以上n笑顔がオカルト研究部に咲いていた。最初に渡されたツィタニアの封筒。



「これはあまりにも少なかった時の事を鑑みて気持ちの整理をしましょう」



 そしてツィタニアは封筒の中を見る。そこからツィタニアが引き出した紙幣。それを見てツィタニアは呟く。



「樋口一葉の……姉さんじゃないですか……宗麟の世界で二番目に偉い人」

「まぁ、ちゃうけどな。ただ分からんでもないわ。旅費の分は俺が引いとるから、まぁそれで我慢しいや!」

「十分ですよ! 宗麟」

「さよか」



 想像以上に賃金が多くて喜んでいるツィタニアを見てアズリタンは安心しながら片手を差し出す。はやく給料を渡せというそのアズリタンの手に封筒を乗せる。



「ほれ、魔王サマ」

「おぉ! 重いぞっ! 精霊王のやつより余の方が入っておるな!」



 そんな馬鹿なという顔をするツィタニアを前にアズリタンは封筒の中を取り出す。そこからはじゃらじゃらと赤銅に輝く硬貨が手に収まらない程。



「これは美しい! 金貨を越えた貨幣と見たぞ小僧! 精霊王の紙きれ一枚とは違って輝きが違うわ」

「魔王それは……!」



 宗麟はツィタニアの唇に指で触れると首を横に振った。そして宗麟はツィタニアにしか聞こえない小さな声で言う。



「あいつ、マキロンとオロナイン以外にもやれ腹が減った、喉が渇いたと金かかったからな。旅費引いたら600円くらいしか残らんかってん。だからせめて十円玉をピカピカに磨いてやったわけや。まぁ見てみぃいあの顔」



 アズリタンは子供が初めてもらった玩具のようにそれはそれは嬉しそうに見つめていた。それらを何個かの纏まりに分けて独り言をつぶやく。



「こちらの十枚は覇竜ラビゲイルに、この五枚はウィッチキングハープーンに……あやつら異世界の宝物を渡すとさぞかし喜ぶであろうなぁ! それも余が汗水たらして働いた金だからのぉ」



 見ていると悲しくなるくらいのそれにツィタニアは宗麟を見るとこう言った。



「さすがに宗麟あれは……」

「労働の報酬で意識だけは異世界に逝っとるけど、さすがに俺も胸が痛なってきたわ……よっしゃああ! 今日は二人の初給料祝いや! 回転すしでもいこうや」



 お金は一番人を狂わせ異世界に誘う麻薬である事を再確認した宗麟。

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