異世界に行く方法その67

「ほう! 魔法に匹敵する力、科学だとぅ? よい! 見せてみよ!」

「そかそか、せやったら魔王サマ、紙コップに今飲んでる100%オレンジジュースを少し入れて、このドライアイスを入れて割りばしでかき混ぜてみ!」

「余に命令とは小僧、死にたいのか? まぁ今回は余の寛大な心で行ってやろう!」



 そう言ってぐるぐるぐるぐるとかき混ぜると、少しずつ固まっていく。それは直にシャーベットへと形を変えていく。



「おぉおお! こぞぉおお! 凄いぞ! 魔法だ! 魔法ではないかぁ!」



 オカルト研究部部室で理科の実験をしてアズリタンを驚かせる宗麟に月刊ムーを読みながらツィタニアは宗麟をじとぉーっと見つめて呟く。



「宗麟、本日の異世界に行く方法の実験はそれですか? そろそろネタがなくなったきたように見受けられるのですが……」



 ツィタニアのツッコミに対して宗麟は窓の外を眺めた。そして飛び立っていく鳥を切ない顔で目で追った。

 そして宗麟は両手を上げる。その意味はツィタニアには分からないが、日本人なら誰しもが分かるお手上げ。



「その通りや。もう俺の持つ知識上。そしてSNSで仕入れた情報も全部つこうた……空っぽや」



 それにアホ面でドライアイスシャーベットを食べていたアズリタンも噴き出した。



「ぶっふぉおぉ! こぞー、それはまことか?」

「嗚呼、誠や」



 ツィタニアは恐れた表情で宗麟に尋ねる。



「宗麟、まさか……諦めたんですか? 貴方が? 嘘ですよね?」



 今までどんな事があっても次々に新しいネタを探してきた宗麟。そんな宗麟から覇気のようなものが全く感じられない。

 抜け殻と化した宗麟。

 宗麟はチュッパチャップスを取り出すとその封を破き口の中に入れる。そして口の中で何回か転がした後にそれを口から出すと深く息を吐いた。

 何も見えないハズなのに、ツィタニアとアズリタンには紫煙が宗麟の中から出ているように見える。



「ふぅ、美味いな。コーラ味」



 そして妙に弱弱しく見える宗麟。そんな宗麟が一言二人に呟く。



「なぁ、もうさ……よく考えたら精霊王サマと魔王サマからすれば……ここが異世界ちゃうんか? 異世界に来てもてんねんから、異世界に行く方法もクソもないんちゃうか?」

「……やめてください」



 ツィタニアは悲痛な顔で否定する。そんなのはツィタニアの知っている宗麟じゃない。信じない、信じたくなかった。



「なんや? 精霊王サマ」

「そんなの宗麟じゃないですよぅ! 宗麟なら失敗を笑って次の実験をって意気込んでたじゃないですか! 宗麟は、何事にも果敢に……」

「それこそやめてくれや、買い被りすぎや……俺はただのオカルト好きの無能な高校生や」



 そう言って宗麟は教室を出ていく。



「そーりーん! まってください! そーりーん!」



 叫ぶツィタニア、泣きそうになるアズリタン、そして数分後。ガラガラガラと扉を開いて宗麟が叫ぶ。



「はい、普段と違う自分を演じる事で並行世界の扉を開きそうなアレ現象は起きないと……まぁネタ無くなったんは事実や。なんか探しにいくでぇ!」

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