異世界に行く方法その61

「よし、三人おれば文殊の知恵や!」



 そう言って宗麟は部室で漫画を読みながら横になる魔王アズリタンと新刊のムーを見つめている。心なしか宗麟の声かけに対してもやる気のない二人。



「精霊王、あんな事を言っておるぞ」

「そうですね。魔王、宗麟のお付き合いをお願いできますか?」

「はぁ! なんで余が……貴様が付き合えばよかろう精霊王!」

「私は魔王、貴女がここに来る前から五十回以上はこの訳の分からない事に付き合わされているんですよぅ! 少しは魔王が協力しなさいよ! あーん」



 そう言ってツィタニアがドーナツ齧りながら言う。それにサラミを大口を開けて齧る魔王はツィタニアを横目に答える。



「いやだ! どうせ痛かったり、意味不明だったりで、結局元の世界に戻れないのではないのだからな! 余はこのサラミを沢山食べる事に忙しい」



 その非協力的な二人を前に宗麟は部長席でカチカチとノートパソコンを叩く。そんな二人に宗麟は静かに言った。



「精霊王サマが食ってるドーナツ、渋谷にある高級ドーナツ。グッドタウンドーナツ、一個四百円。ミスタードーナツやとだいたい一個百円。四倍の価値やな」

「……なっ!」

「魔王サマが大口あけて齧っとるのは谷川の雪サラミ。200グラム4000円。その辺で買えるサラミのおおよそ二十倍の値段や」

「ぶっ!」



 魔王は食べているサラミを噴いた。この世界の価格帯の事は分からないが、二十倍と言われるとアズリタンは焦る。



「そそそそ、そんな高い物なのか?」

「ああそうや、正直そんなん常食できる高校生は世界広しといえでも中々おらんと思うで、まぁ俺一人なら尽きない金子だが、精霊王サマと魔王サマの食い意地は国宝級やで、さすがに金足りんくなって食べもん減らさんといかんかもな」



 それを聞いてツィタニアとアズリタンの目が大きく広がる。元の世界へは戻りたいが、この部室生活も中々に快適である。というか、こと食事と娯楽については天国レベルである。そんな場所で食事が食べられないというのであれば死活問題である。



「ちょっと、それはどういう事ですか?」

「貴様、事と次第によっては余が泣くぞ! いいのか?」



 宗麟は天井を見上げて指を指す。そして地面を指して指を指す。意味が分からない二人に宗麟は言った。



「上がるか下がるか、どっちか選びや! 異世界見れるかもしれへんで」

 宗麟の言葉にツィタニアとアズリタンは声を合わせて叫んだ。

「「下がる!」」

「よしきた信じたで!」



 意味の分からない二人だったが、翌日宗麟はドーナツを箱一杯に、吊るしベーコンを持って帰ってくる。



「小僧、それは?」



 そう言うアズリタンに吊るしベーコンを渡し、ドーナツをツィタニアに押し付けるように渡すと妙に寡黙な宗麟は静かに笑った。



「小豆相場に勝ったでぇ! 異世界気分味わってパーティーや!」



 宗麟の小遣い稼ぎの内容を二人は知らないが、お腹と頭は楽園に行けた。

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