異世界に行く方法その58

「まぁ、ちょう見てや! 精霊王サマ」



 宗麟がそう言う目の前には分厚く大きな古い本が置いてある。それを見てツィタニアは不思議そうにそれを見つめる。



「なんですか? グリモアでしょうか?」



 魔術書と言われれば確かにそのサイズに見えるその本。中を開くと豆粒みたいな字が所せましと並んでいる。



「何が書いてあるのか、しっかりとは読めませんが、わりとちゃんとした魔術書のように思えるのですが……」



 ツィタニアの感想に対して、宗麟は、その本と全く同じパッケージの色違いの本をその横にどさっと置いた。



「精霊王サマを召喚した時の本でーす。ちなみに、これ自作の本らしく、出版社もなく、何故古書店で売られていたのか不思議やけど、50円で売ってました。駄菓子のどでかばーくらいの価値やな。それで召喚された精霊王サマは……50円の価値っちゅー事やな」

「ちょっと! どでかばーをディスるのはやめてください! あれは大変美味しいお菓子じゃないですかぁ!」



 そっちについてツッコんでくるのかと少々宗麟は驚きながら、並べた魔術書の内、新しく仕入れてきた方を手に取るとツィタニアに言った。



「なぁ、精霊王サマ。この魔術書にある呪文で精霊王サマを元の世界に戻せるんちゃうかって思ってんねん。最初に手に入れた方で精霊王サマを召喚したんやったら、必然的にもう一つの方はその逆……ちゃうか?」



 宗麟の言う事は最もだった。可能性が極めて高く、そしてそれは宗麟とツィタニアが別れる可能性も比例して高くなるという事。宗麟はそのまま話を続けた。



「何か精霊王サマ、したい事とか食いたいもんとかあるか?」



 宗麟なりの気遣いにツィタニアは笑うと首を横に振った。



「私を待っている者が沢山いますので、できればはやく」

「……分かった」



 宗麟は頷くと、魔術書を開き、その中にある呪文を読み始めた。



「おんきりきり、さんたーしんぎょー、しゅよみちびきたまえぇ~、さぁいげぇつ!」



 宗麟の掛け声と共に、本が光る。それにツィタニアは憂い帯びた表情を宗麟に向ける。それに宗麟もどんな顔をしていいのか分からないまま見つめる。



「宗麟……」

「精霊王サマ……」



 二人は見つめ合う。そこに言葉はいらない。しかし、変な事に二人は気づいた。どれだけ待てども、ツィタニアが消える事なく、ツィタニアの視界にも今だ宗麟はいる。

 なのに……誰かいる。



「貴様等精霊共も人間ももはやこれまでよっ! 滅びの雷よ! ドロテア第三の雷。トロメーア!」



 ポーズをつけてそう叫ぶゴスロリの子供。それにツィタニアは叫ぶ。



「宗麟離れてください! 魔王です」

「えっ……これ魔王?」



 宗麟が指さす子供にツィタニアは警戒、そして指を指された魔王は宗麟に怒鳴る。



「人間風情が余に大きな態度を取ったものよの! 死んで悔いるがいい! デスフレア!」



 宗麟はやはりなという顔、ツィタニアは自分がそうだったようにデジャブする。魔法が使えないという事を魔王は理解し、宗麟とツィタニアを見比べてからこう言った。



「よし、とりあえず話し合おうではないか」


 令和2年最初の日に魔王降臨。でも危険性0だ!

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