異世界に行く方法その55

「そーりーん! あははは、凄い速いですよぅ!」



 宗麟は笑ってツィタニアに手を振り返す。外から見れば仲良しカップルに見えなくもないかもしれないが、宗麟からすれば自転車に乗ってここまでテンションを上げるツィタニアを見て思う事。


(精霊王サマ、それアホの子やで)


 二人は自転車で2キロ程離れた秋葉原へ行ってみようというお話になった。自転車に乗れるようになったばかりのツィタニアには丁度いい距離なのだが、ツィタニアのテンションの上がり方が大分気持ち悪かった。ロードレーサーのギアチェンジが楽しいのかガチャガチャと変更しながら走る様は初めてマウンテンバイクを買ってもらった小学生男子がギアを一番軽くして思いっきり漕いでいる様子に似ているなと宗麟は思う。



「自転車に乗れるようになったら異世界の人間でもやる事は一緒っちゅー事やな」



 二人はゆっくりとショートライドを楽しむ。二キロであればゆっくり走っても十分少々で到着できるので信号や、その他交通ルールを同時にツィタニアに教えるという意味もあり、宗麟はふとわらけて来た。



「もうこっちに永住しても大丈夫なくらいには精霊王サマも俺の世界の常識はついてきたわな。もうこっちに住むか?」



 宗麟は冗談でそう言ってみるとツィタニアは自転車を漕ぎながら苦笑してみせた。



「それはとても心揺らぐお誘いではありますが、私はこの命に代えても魔王を滅しなければなりませんからね」



 そういえばそうだったなと宗麟は思い出す。このアホの子みたいな女だが、精霊王ツィタニアというだけあり、彼女は王なのだ。



「なら魔王倒したらどないや? 精霊王サマのお役目終了やろ? というか、勇者的な奴はおらんのかい? 魔王言うたら勇者がニコイチやろうが?」



 宗麟はこれが気になっていた。魔王なる存在と戦う為に精霊王であるツィタニアが立ち上がるのはいいとして、ツィタニア以外に魔王と戦える反乱分子はいないのかという事である。



「人間の勇者はいますよ! ですが、彼らが魔王の城にやってくる前に私が片を付ける。そう考えたのですよ! 人には魔王の力は手に負えません。少なくとも私の力で魔王を疲弊させる事ができればあるいはと」



 その話を聞いて宗麟は確信した。あのまま宗麟がツィタニアを召喚していなければ、ツィタニアは魔王に殺害されていただろう。



「精霊王サマ、それめっちゃ死亡フラグや! 精霊王サマの死を見て勇者が本気だして魔王討伐っちゅー流れやな」



 自転車を止めるツィタニア。



「そうなんですよ。宗麟の持つ書物を読めば読む程あれは死ぬ感じでしたね! ですが、助かりました。そういう意味では礼を言っておきますよ宗麟。ありがとうございます」

「お? おぉ、せやけどチャリで遠くまで来てどないや?」

「えぇ、異世界感満載でした」



 そう言って満面の笑みを浮かべるツィタニア。ほんの少し、宗麟はツィタニアを可愛いとお持ってしまう自分がいた。

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