異世界に行く方法その53

「鬼わぁ~そとぉや!」

「福わぁ~うちですね!」



 二人は季節外れの豆まきをする。落ちても食べられるように落花生を投げまわす。宗麟が自分の世界の縁起の良い行いとしてツィタニアに豆まきを教えた。それを一心不乱に実行するツィタニア。

 何故か?



「今までホラーじみた事をしすぎて、若干呪い的なものが怖くなったという事ですが、本当にこの豆まきで運気が上がるのでしょうか?」



 そう、二人は今まで異世界に行くという方法を探る為に行って来たあらゆる事に関して今更になって怖くなってきたのだ。なにせ、ホラーのいくつかは実際に起きてしまった物がある。という事は……



「まぁ、呪いもあるかもしれんっちゅー事やな。火のないところに煙は立たんと言うのしの……豆まきは言葉通りや、鬼はそと、これは悪いもんはあっちいけっちゅー事やな! で、福は内。ええもんはこっちきてーな! ということや。それに、俺らに来て欲しい服っちゅーのは、異世界に行けるって事やろ?」



 それを聞いてツィタニアは落花生を上空に向けて投げまわす。ポーズをつけて大量にまく。何処から宗麟が仕入れてきたのか分からないが、ゴミ袋一杯ある落花生をその辺にぶちまけた。これでもかというくらいに満面の笑顔でツィタニアは宗麟に尋ねた。



「宗麟、しかしこれはどうすれば終わりなのでしょうか?」

「えっ? 豆まきの終わり? そんなん終わりやと思えば終わりやねんけどな」

「随分、宗麟の世界の儀式はいい加減ですね。やはり魔法がない世界というのはそういうものなんでしょうか? ふふふ。ではこのあたりで終了にしましょうか?」



 ツィタニアがそう提案するので、宗麟は地面に落ちている落花生を披露とそれをぱきぱきと割って十七粒をぼりぼりと食べた。



「殻付き落花生ウマっ!」

「これ、割れば食べられるんですね。では私もお一つ頂きます。おぉ! これはとっても上品な味がしますね」



 ツィタニアも落花生を割ってからその中身を食べて、ピーナッツが実に美味しい事を知った。宗麟がこの言葉を言うまでは……



「あのさ精霊王サマ」

「はいなんでしょう?」

「豆まきってさ、最後に落ちた豆拾って食うところまでは豆まきやねんな?」

「えぇ、今まさに私は豆まきをフィナーレまでもって言ったと自負しているのですが?」

「豆は年の数だけ食べるんが、俺の世界の豆まきのルールなんや」



 宗麟は精霊王ツィタニアの年齢を正確に知っているわけではない。が……彼女が人間程度の寿命であるわけではない事も知っている。

 そしてその意味を一番理解しているのはツィタニアだった。



「ここに落ちている豆を全部食べても、私の年齢に足りるでしょうか?」

「さぁ……まぁ、豆まきしても異世界にはいけんかもしれんけど、豆の食い過ぎで死んだら異世界行けるかも……な」



 ツィタニアは年の数まで豆を食べる事もできず、豆まきの幸福恩恵を受ける事もなく、当然異世界には行けなかった。

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