異世界に行く方法その51

「さすがに精霊王サマ、今回で五十回目や、今回は初心に戻ってみようと思うんや! どないや? 異議ありか?」

「いえ、異議はありませんが、初心に戻るというのが嫌な予感しかしませんねぇ」



 宗麟の言う初心というのは、基本的に異世界転生系のライトノベルで言うところの転生方法を試すという事なのだ。

 ようするに死んでみる系である。



「いっぺん死んでみる?」

「実写映画しますよね! 是非劇場で観に行きたいとは思っていますが、さすがに私は死にたくはないのですが……」



 ツィタニアのその予感は当然の如く当たる。宗麟に連れ出されたのは深夜の工事現場、誰もいないそこで一体何をするというのか?

 巨大な重機を見ながらツィタニアは震える。



「まさか、あれでぺしゃんこにするとかじゃないですよね? さすがにあれは痛いですし、ヤバいですって!」



 へッ! と笑う宗麟。やはりそうなのかと恐怖するツィタニア。そんなツィタニアの頭を宗麟はぺしーん! と叩いた。



「アホか! あんなもん動かせへんし、警察くるわ! 今回は穴や!」



 そう言って宗麟は工事で穴を掘っている場所の蓋をバールで開ける。暗く、深く底が見えない。



「これは一体? 何をしようと言うのですか宗麟?」

「飛び込めや! 地球は丸い惑星や、もし完全に繋がったとしても本来なら別の場所にたどり着く、と言いたいところやが、地球の中心はありえへん温度のマントルっちゅーのがあるんや、それで蒸発、せやけど、穴に落ちると異世界に行くっちゅう話は昔からあるんや。おにぎり落とした爺がネズミの世界行ったりとかな」



 信憑性皆無ではあるが、ツィタニアは万に一つの可能性を考え、そして今までとは違い宗麟も本気である事が頷けた。

 それ故、ツィタニアは少し深呼吸をすると宗麟に言う。



「恐らく、戻れる戻れないを別として、これが今生の別れになるでしょう。宗麟、色々とありましたが、ありがとうございました。決意が鈍るといけませんので行きます!」



 宗麟は何も言わず、ただ敬礼をしてツィタニアを見送った。ツィタニアも敬礼をして穴に飛び降りていく。宗麟は地球の地表から地表のおおよその半径を6200キロメートルとし、ツィタニアの空気抵抗を考え最大時速400キロで落下していく計算をした。大体十三時間あればツィタニアはマントルに到達し、消滅する。その日、宗麟は家に帰り、寝つきの悪い中翌日工事が再開されているその現場を見に行った。そして翌日と同じ時間に工事現場に行くがツィタニアは当然戻って来ない。

 女々しいと思いながら宗麟は缶コーヒーを買ってその次の日も工事現場にやってきた。



「精霊王サマ……」



 時間にして48時間、もう精霊王ツィタニアは何処にもいないのだろうと宗麟が思った時。



「とぅ!」



 ツィタニアはポーンと穴から飛び出してきた。



「精霊王サマ……」

「宗麟! 穴の先は異世界でしたよ! 半裸の女性達が腰を振って踊っていました!」

「精霊王サマ、そこ異世界ちゃう! ブラジルや! そうか、精霊王サマ、頑丈やからマントル抜けて斥力こみで時間かかって帰ってきたんか! そうかそうか!」

「なんで少しうれしそうなんです? もしかして宗麟、私がいなくて寂しかったんですか?」  



 答えない宗麟を見てツィタニアは焦る。図星であったという事。それにツィタニアが少し照れる中宗麟は言った。



「腹減ってるやろ? ラーメンでもいこか」



 穴に落ちても異世界には行けない、行けても地球の裏側まで。

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