異世界に行く方法その50

宗麟とツィタニアは薄暗くて、人が密集しているそんなところで光り輝く棒を振る二人。寸分狂いない動きを見せる宗麟とツィタニア。



「再度ODA!」

「了解宗麟」



 オーバー・アクション・ドルフィンというオタ芸、あるいは地下芸と言われたアイドルを応援する振りを見せる。



「次ぃ! PPPPH」

「サー、宗麟」



 ここは東京某所にある日の当たる事のないアイドル。所謂地下アイドル達のライブハウスである。

 そこで二人は手を何度も打ち合わせてから腕を上げ飛びあがる。二人の鬼気迫るその芸は応援するハズのアイドル達への向けられるハズのファンの視線を奪った。なんせ、宗麟は笑っていない。怒りすら顔に出ている。それはツィタニアも同じだった。



「次、ロザリオぉ!」

「はぁいい!」



 本来であればアイドルにおくるハズの捧げる十字架を、ここがお前たちの墓標だとでも言わん勢いで。



「あいつらスゲェ!」



 そう言葉を聞きながらも宗麟、ツィタニア共に何かに憑りつかれたかのように芸を繰り返す。圧倒されていたアイドル達だが、宗麟とツィタニアにファンを持っていかれるわけにはいかない。彼女等の瞳に炎が宿る。



「熱い応援ありがとー! でもここの主役は私達だからねぇー!」



 アイドル対宗麟達のオタ芸という謎の構図が出来上がり、地下アイドルのライブが終わる頃には宗麟達は汗だくで肩で息をしていた。

 地下アイドル達の握手会に宗麟達が参加する事はなく、宗麟とツィタニアは帰路の途中でこう話し出した。



「サイリウムで死ぬほど魔法陣を書いてみたけど、異世界への門は開かんかったな?」

「あの魔術書がいかがわしさ満点なんですよ! 古代にこんなサイリウムなんて物があるんですか? ないでしょ!」



 宗麟は本棚に”オタ芸から学ぶ古代魔法陣学”なる本を戻すと、サイリウムもゴムで束ねて綺麗に片付ける。二人は一週間死ぬほどにあのオタ芸を練習した。夜な夜なダンスパフォーマーの目の前で踊り続け、芸能界からの勧誘も無視し、オタ芸とは神の偶像たるアイドルと語り合う場なのであるとそう心に刻んでいたが、眉唾であった事に少しばかり恥ずかしさがこみあげてきた。そしてどちらがとか言う前に黙る。



「て、テレビでも見るか? 精霊王サマ」

「そ、そうですね!」



 宗麟がテレビをつけた時、アイドルの特番が行われていた。地下アイドルからトップアイドルの仲間入りをしたという少女達。彼女等は異世界にでも来たみたいだと言った。



「俺らとは住む世界がちゃうのぉ! 精霊王サマぁ」

「えぇ、でも何処かで見た事があるような……」



 彼女等は語った地下アイドル時代に、自分達を鼓舞してくれた男女のパフォーマー、応援の言葉を上げるわけでもなく、ライブが終わるとそのままいなくなった伝説のファン。

 彼らに応援されると必ず売れると都市伝説が生まれたのである。



「ある意味、異世界召喚やな! 凄い奴らがおったもんや!」



 オタ芸で異世界には行けないが、アイドルを異次元の舞台に上げる事はできるらしい。

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