異世界に行く方法その46

「精霊王サマ、うらしま太郎って話があるんや」

「それは誰かのお名前ですか?」

「いかにも、そのうらしま太郎は、時代的には俺の何百年も前の人っちゅー事になるんやけどな、海で子供たちにいじめられているウミガメを助けるんや」

「凄い良い人ですねぇ」

「やろ? で、そのウミガメがお礼に竜宮城ってところに連れていってやると言われるんや」

「リュウグウジョウですか?」



 宗麟は簡単なお城の絵を描いて、周囲に魚なんかを書き足して見せる。ツィタニアもそこがきっと豪華な場所なんだろうなとなんとなく理解する。



「そのウミガメは大変義理堅い方なんですねぇ!」

「おうよ」

「ところで、そのお話が何か今必要なんでしょうか?」

「精霊王サマ、その物語には続きがあんねん。うらしま太郎氏はその竜宮城で御馳走を食べて、鯛や平目の踊りを見たり、その竜宮城の主であり美女の乙姫様と出会ったり、そりゃあもう至れり尽くせりやったわけやねんな?」



 それだけを聞いているとツィタニアはどんな世界にもよくあるご都合主義的なお話だなぁと思っていたのだが……



「まぁ、うらしま太郎も漁師で家には母親もおるんや。だからそろそろ帰りますわぁ! と言ったところ、乙姫が玉手箱っちゅーもんをお土産に渡すんや!」

「良い方じゃないですか、乙姫さん」

「それがな? 決して開けてはなりませんよ? と言って渡すんや」



 そして当然、その玉手箱を開けると老人化するうらしま太郎。その話を聞いてツィタニアの表情が段々険しくなっていく。



「サイコパスじゃないですか、乙姫」

「まぁ、大分イカれた女である事は間違いないの? 今回は問題はそこやないんや! うらしま太郎氏は確実に異世界に行っとる。そしてその異世界に行った事に対して何等かの口封じに玉手箱を渡したんちゃうかってな?」



 ツィタニアは少しばかり考える。そしてハッ! と気づいた。



「います。そういう魔女がいます! 相手の寿命を奪い、永遠に生き永らえようとする魔女です」

「童話系の魔女はやたらと欲しがりやからの。人魚の声奪ったり、子供を太らして喰おうとしたりの? という事で俺達も墨田川に亀を助けにいくぞ」



 二人は海ではなく川に出向くと信じられない事にカメをいじめているであろう子供、ではなく大人がいたので宗麟は大声をあげる。



「こらこらこらぁ! カメいじめんなぁ!」

「なんだお前らぁ!」



 宗麟はカメを虐めている大人達に絡むが、大人達は逆キレする。



「これはミシシッピアカミミガメだ! 外来種がいたら川の生態系が変わるから許可を取って駆除しているんだ!」

「えっ? へ?」



 宗麟とツィタニアは、水質調査に来たという学者二人に、専門的に小一時間説教を受けて解放された。



「精霊王サマ、世の中には可哀そうな命があるんや。外来種ってやつでな? 人間のせいで増えて、でも生態系壊すから駆除される存在なんや」

「魔物にもそういうのがいますねぇ……それは少しデリケートな問題ですねぇ」



 カメを助けて異世界には行けなかったが、社会問題について少し賢くなった宗麟とツィタニアだった。

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