異世界に行く方法その41

「精霊王サマ、俺気づいたんだ!」



 突然、ラノベを読みながら宗麟はそう叫ぶ。それに随分この世界の文字を覚えたツィタニアもまた同じくラノベを読みながら宗麟に返答する。



「何がですか?」

「異世界に行くヒントはラノベにあると見たり」



 昨今の異世界転生の多くは中高生向きのライトノベルから来ている。それに関してツィタニアは確かに一理あると感じていた。



「ややご都合主義的ではあるものの……私の世界に近い世界観の表現も多く見られます……もしかして、これらの本の製作者は……」



 ラノベ作者は異世界に行った事があるのではないか? 宗麟はそう言いたいのである。それにツィタニアも納得した。



「善は急げです!」

「そうだな」



 各出版社に宗麟は電話を入れる。ラノベ作者に会わせろ! 当然そんなクレイジーなファンの要望に応える出版社はなく門前払い。



「こいつら、こちらが下手に出ていれば!」



 ふと宗麟は手に持っていたラノベを見て思い出した。近所の本屋さんでこの作品の最新刊を購入した人が、この作品の作者の握手会兼サイン会を行っている事。



「行けるぞ精霊王サマ!」



 同じ小説を二冊購入し、宗麟とツィタニアは長い列を並ぶ、作者の古参ファンは友達のように作者と話し、楽しそうに握手&サイン会は進行していった。なんだかそわそわするツィタニア。それに宗麟は質問する。



「どうした精霊王サマ?」

「いえ、この物語を書いた人があそこにいるんでしょう? なんだか緊張してきたのですよ」



 宗麟も言われてみれば好んで集めていたライトノベルの作者が今、目の前にいる事にツィタニアと全く同じ気分になってきた。

 ゆっくりと、順番は進み。ついに宗麟とツィタニアの番が回ってきた。



「えっと……あっ、最新刊が出るとすぐに購入してます」



 宗麟がイモり、何の変哲もない感想を述べる。宗麟たちが楽しんでいるライトノベルの作者は気さくで腰が低かった。



「いつもありがとうございます」



 そして手を出してくれるとの宗麟とツィタニアは交互に握手をする。そして購入したライトノベルの新刊にサインをもらった。そこでツィタニアが動いた。



「すみません。先生は異世界に行った事があるんですか? こんな作品を書けるなんて」



 その質問にライトノベル作者は笑う。



「うん、行ってるね」

「どうすれば行けるんですか?」



 その言葉に作者は新刊に指を指した。



「君たちも書いてみれば分かるよ」



 ラノベを書けば異世界に行けるかもしれない。それを宗麟は脳内フォルダに保存した。

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