異世界に行く方法その38

「実は幼馴染や友人が異世界の存在であるという設定がある作品が多いとは思わへんか?」



 宗麟が漫画雑誌を読みながらそう言うので、ツィタニアは数の恐ろしく減ったココナッツサブレをさくさくと食べながら、ツィタニアは一体こいつは何を言っているのかという事を考えながら、かつ思い出した事がある。



「そういえば、私からすれば宗麟は異世界の人ですし、宗麟からしても私は異世界の人じゃないんですか?」



 ツィタニアの言わんとしている事は単純明快である。宗麟が今言わんとしている事が二人の間で完結してしまっているという事。



「精霊王サマ……お前は俺の幼馴染か? それとも友人か?」

「幼馴染ではありませんね……言われてみれば私は宗麟に無理やり呼び出された存在ですし……友人というのもおかしな話です」

「せやろ? という事で、今回は身内が実は異世界の人で! というパターンを想定したいと思いまーす!」



 宗麟の今回の思い付き、宗麟の知り合いに異世界の人がいるかもしれないという恐ろしく希望的観測すぎるその提案に関してツィタニアは可哀そうな人を見る目で宗麟を見つめる。



「さすがにもうネタが無くなってきましたか宗麟?」



 そういうツィタニアを宗麟は逆に馬鹿にしたように見つめる。そして宗麟は部室の窓から外を指指す。



「あのハゲちらかしとるオッサン」

「えぇ、頭頂部がやけに寂しい男性ですね」

「あぁ、あいつ昔俺の家の近所に住んどったんや! あれでもまだ二十八でな?」

「嘘でしょ! 私はてっきり五十は越えていると思っていましたよぅ」

「案外酷いな。精霊王サマ、まぁ見てみ。あいつ、俺の家の近所におった時から不審な動きをようしてたんや、まさかこの学校の教師になってるとは思わへんかったけど……あの不審な動き……あいつはこの世界の人間とちゃうかもしれへんってな……」



 確かにきょろきょろと怪しげな行動が目立つなとツィタニアも思っていた。



「つけるで、精霊王サマ」

「分かりました」



 部室から出ると、該当の教師をつける。あまりにも不自然なその動きにツィタニアは宗麟に尋ねた。



「この先には何があるんですか?」

「この先はクラブハウスやな。女子の更衣室もある」



 宗麟は自分で言って今から起きる惨劇について気づいた。そして遅れてツィタニアも……



「宗麟」

「皆までいうなや、ほれスマホ。使い方分かるやろ?」



 そう言って宗麟は渋い顔をする。それにツィタニアはまたこのパターンかと思って110番に電話をした。



「もしもし警察ですか?」


 異世界には行けなかったが、しばらく宗麟とツィタニアは女子から英雄として称えられるようになった。

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