異世界に行く方法その37

「βエンドルフィンっちゅーもんを精霊王サマは知っとるか」

「いいえ、残念ながら」



 宗麟は知っていたら知っていたで怖いなと思いながら部室に出前を頼んでいた。宗麟は手足につける重りをツィタニアの手足首に取り付け、そして指示を出した。



「今から陸上部の長距離部隊がハーフマラソンしてくるから、ちょっとそれについて行け!」

「何故ですか? この前らんなーずはいという物では異世界には行けないという事が立証できたでしょうに!」



 それだけなく、謎の怪異にも出会ってしまった事で、精霊王ツィタニアは正直このマラソンやランニングに対してあまり良いイメージを持ってはいない。



「まぁええから言ってこいや、そんかわり美味い物食わせたるから! はよいけぇ!」



 そう言って尻を蹴られて部室からツィタニアを追い出す。少しばかり納得のいかない表情を見せるツィタニアだったが、美味しい物が食べられるという事でしぶしぶ陸上部のハーフマラソンについて行く。



「おうおう、走って行きよったわ! 両手両足合わせて8キロ。それで陸上部についていくとかホンマバケモンやな」



 陸上部も慣らしのハーフマラソンなので二時間程の時間をかけて走って帰ってくる。今は放課後の十六時。出前が来るのが十八時、ちょうどよい時間だなと思いながら宗麟は今までの異世界に行く方法に関してレポートを作っていく。



「さて、今回は脳内麻薬の大量分泌による異世界トリップを狙うという名目やけど……精霊王サマはもしかしたら魔法を使えるかもしれん」



 ラベンダー畑に行った時、ツィタニアは魔法を確かに放った。無意識下であったとはいえ、何か方法があるだろうと……それをコントロールする事ができれば、異世界に行く事も戻る事も出来るのではないかと……



「魔王をここに呼び、好き放題できるっちゅー話や」



宗麟が濃いカルピスでも飲もうかと思った時、ぜぇはぇと疲れたツィタニア、そして出前のお兄ちゃんが部室にやってきた。



「まいどぉー!」

「お疲れ様」

「そぉおりぃいん……づがれまじだぁあ!」

「はい、お疲れさん」



 肩で息をしているツィタニアの前に宗麟は優しい表情で差し出した。



「ほら、熱い内に食いや! ラーメン」

「いだだぎまずぅ!」



 箸の使い方もお手の物、ずるずると音を立ててツィタニアはラーメンを食べる。泣きながら食べる。さすがにハーフマラソンを重りをつけながら走ったのはつらかったのか……美味い美味いと言いながら今だ泣き止まないツィタニア。

 そして食べ終わる頃には満面の笑顔に戻った。



「あぁ、おいしかったです。ごちそう様でした」



 糖と油を一気に身体に入れてハイ状態にするβエンドルフィンは異世界の精霊王には分泌されないのか……美味しそうにラーメンを食べるツィタニアを見て、宗麟もなんだか満足して言った。



「帰るか?」

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