異世界に行く方法その35

 カコーンとボールが剛速球で飛び込んでくる。そして遅れてツィタニアはバットを振るう。当然空振り。



「ひぃいい速い!」

「まだ90キロや! 最終的には人外を越えた190キロに挑戦すんねんからな! ほら構えぇ! プレイボール!」

「えい! ふぁあああ!」



 自分の素振りの反動で倒れこむツィタニア。そんなツィタニアを見て宗麟は驚いた顔をする。

 ツィタニアが転んだ事ではない何かに驚く宗麟。



「精霊王サマ……」

「どうしました宗麟?」

「死ぬほど球技のセンスないな? 俺が星一徹やったら野球教えへんわ!」



 ツィタニアは今自分が何をしているのかも全く分からない。突然宗麟に連れられたツィタニアは電車に乗り、バッティングセンターへとやってきた。



「時に、宗麟。私は何をしているのでしょうか?」

「あ? バッティングセンターやねんから、バッティングやんけ! ダボか精霊王サマは?」



 ツィタニアは宗麟が買ってくる週間雑誌にも野球を題材にした漫画は何度か読んだ事がある。手に汗握るそれらにツィタニアも感動したものだ。



「いえ、これはある程度分かるのですが、何故私がこんな事をしているのでしょうか?」

「いや、昨日移動教室の時にな? 野球部の野村君が、全国に行ったら異世界なんだろーなとか、寝言ほざいとったから」

「酷いですね宗麟」

「で、ワシ等が異世界をクソ野球部に見せやろうと思ってな? 俺と精霊王サマが野球部の助っ人に入るっちゅー事や! クソ雑魚野球部は全国に、俺らは異世界に行けるっチュー算段や!」



 宗麟の言わんとしている事はある程度分かったのだが、自分ばかりこんな事をさせられているのが納得できない。



「それなら宗麟はどうなのですかぁ! できるんですか?」

「は?」



 90キロ、100キロ、110キロそして。

 100マイル。150キロ。

 それらを宗麟は全てホームランと書かれた的に放り込んだ。それにはさすがのツィタニアも度肝を抜かれた。



「嘘でしょ……凄い!」

「リトルリーグ、世界大会優勝スラッガーの鳴宮宗麟と言えば、知る人ぞ知る伝説のバッターやで!俺についてくる覚悟はあるか?」



 何故かツィタニアは直立して答えてしまった。



「はい!」

「おーけー、精霊王サマ。世界狙わせたる」



 来る日も来る日も異世界という全国に行く為に二人は訓練した。泣き言を言いそうな時は宗麟が励まし、そして宗麟も納得するレベルの完成度を誇る選手となった。

 190キロ。



「止まって見えますよ宗麟!」



 場外ホームランに叩き込み、宗麟も無言で頷くとそのまま一欄台学園に戻り、野球部に向かった。



「俺達と異世界に行こう!」

「鳴宮君はいいけど、ツィタニアさんは無理だよ」



 それに激高するツィタニア。



「何故ですか! 私が女だからですか!」

「そうだよ!」

「横暴です! ねー? 宗麟、私はこんなゴミ野球部なんかより心身ともに最強ですよ!」



 ツィタニアは自分の味方であるハズの宗麟を見ると冷や汗を流していた。



「そう……りん?」

「すまん。女子が野球できるんわリトルまでやった……」



 女子で異世界に行こうと思うと、女子野球部に入らないとダメという事を宗麟はメモ帳に記載する。

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