異世界に行く方法その32

「では早朝ランニングをしたいと思いまーす!」

「ランニングって宗麟、足は大丈夫なんですか?」



 少し前にVRゲームをしながら学校の階段から落ちて骨折した宗麟。まだ一週間と経っていないのに宗麟はギブスをしたままランニングウェア、ランニングシューズを履き、早朝5時の皇居周辺へと戻ってきた。



「宗麟、ランナーズハイでは異世界には行けなかったのではないですか?」

「ランナーズハイではな! 今回は、異次元からの使者に遭う実験をしまーす!」

「異次元からの使者ですか?」

「まぁ、走りながら話そや!」



 そう言って宗麟はかなりのスローペースでランニングを始める。既にツィタニアからすればこの満身創痍だったハズの宗麟がここまで回復し、運動まではじめている事に彼こそ異次元からの使者ではないのかと思ってしまう。



「色んなパターンがあるんや! チャリ乗ってたり、ランニングをしてたり、するらしいけど、明らかに人間やない姿で現れるらしい」

「ほうほう、それでそれで? なんだかそれっぽいお話に聞こえてきましたね」



そしてその異世界からの使者は、何かを出会った相手に言うらしい。それは挨拶だったり、聞いた事のない言葉だったり……



「で、それを復唱するように言うんや! でそれを復唱すると一つお願いを聞いてくれるっちゅーやつや」

「でましたね。お願い聞いてくれる系……大抵そのお願いの代償がすさまじいパターンじゃないんですか?」

「いや、コイツはな。復唱せーへん時、ぶち殺されるという。そんな感じの異次元からの使者やな」

「なんとも理不尽な怪人ですね」



 もはや、ツィタニアの中では怪人でしかないその人物。そしてツィタニアはその怪人について名前を知らない。



「宗麟、その怪人のお名前は?」

「嗚呼、言うの忘れとったな? トンカラトンっちゅーねん。こいつ自体は、戦後の日本から出てきた怪談話やってんけどな。結構目撃例があって、早朝にランニングしてたり新聞杯初してると出会うってな。場所も不特定多数やから、運が良ければ会えるやろ」



 大分適当なそれにツィタニアは苦笑するが、何か鼻歌のような歌声が聞こえる。



「宗麟!」

「ちょ、待てや! なんか雰囲気おかしないか?」



 早朝で明るいハズなのに薄暗く不気味な雰囲気が漂う。



「トントントンカラトン!」



 スーツを着た男がそう言いながら宗麟とツィタニアの目の前に来て大きな口を空けるとこう言った。



「挨拶ぅ!」

「ひぃい! おはようございます! おはようございます!」

「おはよいございまーす!」



 宗麟とツィタニアが45度のお辞儀で挨拶をするとそのスーツの男は「他にいう事は?」

 と聞くが二人は揃って「何にもありません!」と言うとスーツの男は去っていき、そして不気味な雰囲気は元に戻る。そして一言宗麟が叫ぶ。



「こっぇえええ! マジ怪異こえぇえ!」



 早朝のランニングには気をつけろ! と宗麟はメモに残した。

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