異世界に行く方法その18

「えっと、これは何をしようとしているのでしょうか? ねぇ、宗麟?」



 段ボール箱をカッターナイフで切り取り、座れるサイズにした物を用意。そしてそれを持って河原に来ていた。

 土手からそれに乗って滑っている子供たち。恐らく、というか間違いなく同じ事をするんだろうとツィタニアは理解した。



「こんな子供の遊びをしにきたのですか?」

「精霊王サマ、お前は本当にアホか? ここは練習に決まっているだろう! とりあえず滑ってみろ!」



 子供たちがやっている事を見て、恐れるというよりは楽しむ事にした。段ボールの上に乗り、土手の坂を滑る。

 ぎゅーんと滑り、ツィタニアは上で見ていた宗麟を見る。宗麟は親指を上げる。戻ってきたツィタニアはやや興奮気味に言う。



「こ、これは実に面白いですよ宗麟! いえ、なんというか精霊王としてこれはどうなの? という背徳感もあるのですが……そんな事、どうでもよくなるくらいこれは楽しいですよ!」

「せやろせやろ! 日本人のガキでこの遊びを知らん奴は人生の全てを無駄にしていると言っても過言ではない。という事で精霊王サマ、もっと高いところから滑りたくないか?」



 次にツィタニアを連れて行った場所は”のぞき坂”



「こ、これはかなり急ですね!」



 やる気満々で、ツィタニアは段ボールという軽装備で急な坂を滑る。途中でこけ、すりむくもアドレナリンが出まくっているツィタニアには関係が無かった。高いところから滑るというその快楽がツィタニアの判断力を完全にマヒさせた。

 そしてそれこそが宗麟の考える新しい異世界トリップの方法である。その坂を滑り、さらに悦に入っているツィタニアに宗麟は提案をした。さらに急勾配から降りるのはどうかと……それが危険をはらんでようとも……



「精霊王サマ……その命尽きるかもしれないのに……あんたはほんまもんや!」



 千葉県は伊予ケ岳。本来は登山をする為のそこを時間をかけて上り、下りは段ボールで……本来ゆっくりと時間をかけて下山するハズなのだが……



「精霊王ツィタニア、いきまーす!」



 なにやら楽しくなっていて気付いた宗麟だったが……ツィタニアはこの世界では魔法も何も使えない。以前病院に運ばれた経緯もあるわけで……いかに頑丈でも打ち所が悪ければ確実に死ぬ。



「あきません! 精霊王サマぁあああ!」



 段ボールの上に乗り、精霊王ツィタニアーは滑る。その自殺行為にも近い、登山道段ボール滑り。

 その時、奇跡が起きた。加速する段ボールは空を滑空し、草木に突っ込んだ。それはもう漫画みたいに色んなところをバウンドし、地面に到着する。

 ゆっくりと時間をかけて登山道を降りた宗麟は微動だにしていないツィタニアに声をかけた。



「精霊王サマ大丈夫か?」

「あぁ、面白かった。もう一度滑りますね!」

「あかんあかんあかん!」



 この方法はツィタニアを違う意味で別の世界に連れて行く事になる事を宗麟は肝に銘じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます