異世界に行く方法その16

「精霊王サマ、前回なんでか俺の家のに行く事で福引ができへんかったから今日こそはガラ抽や! 奇跡的に前回は一等の健康ランドが出ぇへんかったから、今回試してみるで!」



 再び商店街に向かったツィタニアと宗麟。

 二人が景品の情報を見ると、二等の商品券は既にもう誰かが引き、三等の洗剤もあとわずか、ペットボトル飲料とポケットティッシュ。

 そして……



「一等の健康ランドはありますね。しかし、あれをどのようにして手に入れるのでしょうか?」



 そのツィタニアの質問に対して再び宗麟は過去のガラ抽のノートを取り出した。そしてそれをツィタニアに渡す。



「こういう地域の催しっちゅーのは、全く変わらへんもんなんや。ただいつ一等を投入してくるかまでは分からへん。せやけど、大体何回目で一等が当たるかはある程度狭める事ができるっちゅーはなしや!」



 宗麟が言う話をツィタニアは聞いていると少しばかり宗麟を見直してしまった。今までの宗麟の取ってきたデータによると三十回目前後でその一等は出ている事になる。開店からガラガラ抽選をする人を見てその回転数付近で勝負をかけに行くというのが宗麟の考え。



「確かに、それなりに理にかなっていますよね。宗麟」

「せやろ? 俺以外、こんなガラ抽に本気で参加する奴なんておらへんねんからな」



 宗麟は何とも言えない表情をしているのでツィタニアは宗麟に尋ねた。他の客は言われるがままにガラガラを回して、ポケットティッシュをもらい去っていく。そんな本気の客はいないように見える。宗麟は何処か恨んでいるような表情すらしていた。



「宗麟は何か、このガラガラ抽選に嫌な思い出でもあるのですか? そんな魔王に家族を殺されたような顔をして……」

「俺か? 俺もただポケットティッシュをもらうだけの愚かな人間やった。というかあの事件がなければそのままでいられたんかもしれへん」

「……何があったんですか?」



 今まで、ツィタニアをおちょくるような事はあっても、こんな真面目な反応を起こした事は無かった。



「俺の前で、昔ハワイ旅行が出たんや……世界が滅べばいいと思った。だから、俺はこの商店街に絞ってガラガラ抽選のデータを集めて、集計して今日。その結果を出す時が来た。ほないくで、三回あるからあのおばちゃんで28回目、その後ろに並ぶ」



 宗麟とツィタニアは大体三十回目を回せる列に並ぶと、前で一等が出ない事を祈りながら進む。そして本番。

 宗麟が二回。白が二回出た。



「ヤッター ポケットティッシュダー」



 そしてツィタニアの最後の一回。

 コロン。

 金色の玉、一等が排出される。その時、宗麟とツィタニアの脳内で快感物質が大量排出される。その瞬間、二人は今まで味わった事のない感覚を覚えた。

 カランカラン♪



「おめでとうございます! 一等の健康ランドペアチケットです!」

「あ、やりましたよ! 宗麟」

「あぁ……あぁ!」



 膝をつき、宗麟は涙すら流す。瞬間的にギャンブル脳になるという異世界感覚を味わう事になったのだが……もちろんガラガラ抽選で異世界には行けない。

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