異世界に行く方法その11

「はい、精霊王サマ。本日の議題に入るで!」



 部室でお湯を入れたカップラーメンを前にツィタニアにそう話しかける宗麟。カップ麺が出来上がるまでの3分間くらいは待ってやろうかとツィタニアはその話に耳を傾けた。



「はい、本日はどんな方法で異世界に?」

「今日、俺達が食べようと思っているカップ麺はなんでしょうか?」



 見りゃわかるだろうとツィタニアは並んでいる二つのカップ麺を見つめてから宗麟にその名前を答える。



「どん兵衛ですね。日清において他のカップうどんの追随を許さぬ、お揚げのジューシーさ、そしてスープの本格的な味わい。一度食べると病みつきになる物です」

「大きな宣伝ありがとう。俺は日清といえばカップ麺のノーマル味が一番好きなんだが、今回はどん兵衛なくしてはクリアできない実験だ」

「それはそうと……もう3分程経ったのですが……」

「10分どん兵衛だ」



 説明しよう。どん兵衛は基本三分が食べごろだと言われているが十分間食べずに放置してお揚げにスープが染み渡った状態で食べると美味いという信じられない話がSNSで拡散された事で生まれた食べ方である。



「宗麟、いくらなんでもそんなどん兵衛に対して失礼極まりない対応です! 断じて十分待つなんて拒否します! 絶対今食べた方がいいです」

「勘違いするなよ精霊王サマ。いつからお前は十分後にどん兵衛が食べられると勘違いしていた?」

「宗麟は一体何を言おうとしているのですか? 全く分からないのですが……」



 宗麟は目をつぶり俯くとこういった。



「百分どん兵衛だ。十分どん兵衛なんてもう誰もがやったそんな物食っても異世界なんざいけやしない。その十倍の百分ならどうだ?」

「そもそも、どん兵衛で異世界になんて行けるわけないでしょうに」

「いや、そうでもないんだ。これを見てくれ」



 そう言って差し出したのは缶詰。そこには異世界缶と書かれている。それを見てツィタニアは驚いた。



「まさか、これで異世界に?」

「嗚呼、ド〇・キホーテで売っていた異世界に行く為の缶詰だ。だが、この缶詰を開ける前に異世界じみた事をする必要があると記載されている」

「それが……100分どん兵衛?」



 こくりと頷く宗麟にツィタニアは喉をごくりと鳴らした。そして一言。



「待ちましょう。100分」



 二人は本来のカップ麺の待ち時間のおおよそ33倍。100分という時間を自分を無にして待った。そして食べる。

 冷たく、硬くはっきり言って美味しいとは言えないそのどん兵衛を食べ、そしてスープまで飲み切ったところでお互い見あって異世界缶を開けた。

 何も起こらないが、宗麟とツィタニアは握手する。二人はどんな状況にも動じない不屈の心を手に入れた。



「宗麟、食べ物不味くなる系は今後やめましょう」

「お、おう」

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