異世界に行く方法その8

 水やジュースにコーヒーやお茶が用意されている部室。それにツィタニアもさすがに慣れた表情で宗麟に聞く。



「宗麟、この状態はなんでしょうか? パーティーかイカれた儀式ですか?」

「精霊王サマ、トイレってさ。どういう場所かわかる?」

「何を言わせるんですか、宗麟は鬼畜ではあると思っていましたが、変態だとは思いませんでしたよ! 見損ないました」



「いや、まぁ俺の事を見損なってくれてもええんやどさ。どうせなら、トイレとかの水場が霊的な場所なのかどうか教えてくれへんか? ちなみに俺は全く、そういう変態プレイには興味があらへん」



 宗麟の質問に対して、ツィタニアは少し考えてから宗麟の聞きたかったトイレが霊的にどういう場所かを答えた。



「そうですね。実はリラックスするという観点から、お手洗いは霊的にはわりと適した場所です。しかし、なんでまた?」



 宗麟はツィタニアに缶のコーラを渡す。それを受け取り、ツィタニアは反射的に「ありがとうございます」とそれに口をつける。



「一度初心に戻る事にしたんや。精霊王サマ」

「と、仰られると?」

「トイレから吸い込まれたりで異世界に行く、ってパターンも結構あんねん。某風呂漫画とかな」



 と宗麟が訳の分からない事を言っているという事だけはツィタニアには分かったのだが、それとこの飲み物の山との関連性はいかに?



「どのタイミングでトイレにいるのかが分からない今、用を足す回数を増やす為に、あらゆる物を用意してみたんや。特にコーラやお茶、コーヒーはカフェインがたっぷり含まれてるやろ?それで利尿作用アップでトイレいきまくり、異世界に行ける可能性を大幅アップっちゅーわけや!」



 そういって少年漫画張りの笑顔でウィンクして親指を立てる宗麟にツィタニアはコーラをくぴっと飲みながら少しばかりイラついていた。



「なんかそのノリ、イラっときますね」

「イライラはカルシウム不足だな。牛乳のめ」



 コーラを飲み、牛乳を一気飲み、そして当然ツィタニアは尿意を催す。そして宗麟に一言。



「ちょっとお花をつみに」

「マリーゴールドをたのんますわぁ」



 そんな掛け合いの後、ツィタニアがお手洗いに向かい、宗麟はやる事がないのでホットコーヒーを飲みながら月間ムーでも読んで時間をつぶしていた。

 されど、もう十分、十五分。



「ん? 大きいお花を摘みに行ってもそんな時間かからんやろ? まさか、マジで異世界行ってもーたんか? まぁ、そんなことあらへんよなぁ~」



 待てども待てども戻ってこないツィタニアが気になり、宗麟は女子トイレの前でうろうろする。当然女子の痛い目を向けられる事になるのだが……



「精霊王サマ、向こうの世界行ってもーたんですかぁ~!」



 女子トレイに向かってそう叫ぶ宗麟。教師に報告され、滅茶苦茶指導室で怒られたあげく、部室に戻るとそこにはツィタニアはコーラを飲みながら月間ムーを読んでいた。



「ワレ、どこおったんじゃボケがぁ! 俺がどんな目にあったか分かっとんのか?」

「いえ、中々面白かったですよ。宗麟が先生という人に謝罪している姿」

「まさか……ハメよったんか?」

「行けるわけないでしょう! お手洗いですよ!」



 当然の突っ込みとともに、宗麟はメモ帳にこの方法をバツをつけた。

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