異世界に行く方法その5

「はい、精霊王サマ。今日は異世界に行ってそうな人々が集まる場所に来てみました。ここに来れば何か手掛かりを知れるのではないかと思ってる」



 東京某所の雑居ビルに二人はやってきた。そこではお互いが向かい合って笑顔を作る練習をしている。



「宗麟、笑顔を作るという事自体は疑問に感じないのですが、どうもここにいる人たちを見ていると穏やかな気分にはなれないのですが……」



 同じ服装をしており、もう作業というくらいにお互いで見つめあいながら笑う。正直常軌を逸脱しているとしか思えない光景であった。



「まさに狂気の沙汰とはこの事やな」



 宗麟の言葉を聞いてツィタニアはならどうしてこんなところに連れてきたという顔をするので大友は咳払い。



「げふん。いや、このクレイジーもとい斬新な理念を持つ集団のところに一人で行くには少々怖いというか、ヤバみを感じるというか……ねぇ」

「そんなところに私を連れてきたんですか? 信じられません! 最低ですね宗麟」



 そうこう二人が話していると、この立案者というか責任者が超笑顔で話しかけてきた。



「おやおや? 見学者さん達は笑顔が優れないですねぇ?」

「大丈夫やで、俺は超笑顔や! 教祖様」

「教祖……ではありませんよ。ここは宗教ではありませんから、ほら向き合って! にこー」



 宗麟もツィタニアも「うわ! ヤバい奴だ」と思ったが同じく超笑顔を返してみせた。



「なーいす! 笑顔ですねぇ」



 ここは凄いと二人は思った。確かにある意味では、ここは……



「異世界なのかもしれない」



 そう宗麟が納得して言うので、ツィタニアも同じく納得しかけたが、よく考えると違う。



「いやいやいやいや! 宗麟、ここは違います! 別世界の扉は間違いなく開いていますが、ここは私の世界ではないです」



 ツィタニアの当然の抗議に対して、宗麟も頷く。



「俺もそう思う。という事でそろそろずらかるか」

「もうお帰りですか?」



 すかさず教祖様が話しかけてくるのでゴマすりしながら宗麟は頷く。



「いやぁ、もう充分笑顔を満喫したんで」

「では、笑顔料等頂戴してもよろしいでしょうか? いえ、金額は決まっておりませんが、だいたい皆さま一口五万円ほどから」



 チャリン、チャリン。



「五円が二重にありますようにってか?」



 教祖様の手の平に五円玉を二枚のせる宗麟。そして笑顔を見せると教祖様を笑顔で二人を返してくれた。



「あれでよかったのですか?」



 ツィタニアがそう聞くので、二人で揚げたてのごぼ天を食べながら宗麟が話す。



「まぁ、今から言う話はリアルなんだがな? 冷やかしでこういうところに行くと、大体二回程襲われる」



 ブーンとバイクに乗ったフルフェイスの男に石を投げつけられた。そして帰りに誰かに追いかけられた。



「まぁ、この方法では二つの意味で異世界に行ってしまう可能性があるのでやめておこう」



 そう言ってたんこぶを撫でながら宗麟はメモ帳にバツをつけた。

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