異世界に行く方法その2

 東京、秋葉原。

 高校が休みの土曜日、東日本、というか実質日本最大の電機街にやってきた二人。



「知っているか? 精霊王サマ。この秋葉原という町は千代田区なのか台東区なのか問題があり、かつそもそもこの場所自体がある種の異世界と言える」



 宗麟の秋葉原うんちく。そして宗麟とツィタニアは肉汁麺のカウンターに座りレベルMAXの肉汁丼を頼むと、そのチョモランマのような丼を前に驚愕していた。



「宗麟、これは一体? あきらかに一人で食す量とは思えないのですが?」

「はい、よく気づきました。ぱんぱかぱーん! 異世界へ行く実験第二回は、幽門を開くに決まりやぁ!」

「幽門?」



 宗麟は語った。大食いを、人間には胃の許容量限界を超えた満腹感以外にも咀嚼による疑似満腹感や血糖値の上昇による満腹感等があるという事。



「はぁ、人体のミステリーですね。ですがそれがなにか?」

「それら偽物の満腹感を越えてやな、胃の許容量限界まで食べ物を入れる。するとどうなる?」

「お腹一杯になるのでは?」

「せや! そしてそれでも食べ物を入れると、リバースするやろな。普通はな、ただ幽門っちゅーところが開いたら、なお入る。その門を開いた連中は、向こう側を見たっちゅー話しや」

「まさか、これを食べていれば異世界に」

「利口やな精霊王サマ、ほないくで!」



 かくして大食いが始まった。小皿に肉を取り分けて、ご飯・ご飯・肉・スープの順で食べる宗麟。かたや、上から考えなしに攻略をしようとするツィタニア。甘辛い肉が喉の渇きを助長させる。コップ一杯に水を飲み干そうとするツィタニアに宗麟は叫んだ。



「精霊王サマ、アカン! 腹の中で米が、米が膨らんでまう!」



 ごくん。

 食べ始めてから二十分程で二人の箸が止まった。残りは三分の一程。宗麟は満腹状態で語る。



「人間が満腹感を感じずに食べられるのは大体十五分と言われとる。ここからは自分との闘いやな。ゆっくり少しずつでも入れていかんと入らんくなる。生卵の使い道をしくれば終わりやで」



 無言で二人はゆっくり、ゆっくりと食べすすめる。御茶碗一杯分程の量が残ると二人は同時にスープと生卵をかき混ぜてご飯にぶっかけて啜り食べた。

 同時完食。無言で二人は手をパンと合わせた。それはお互いの健闘をたたえたスポーツ選手のように、気高くそして何処か同じ困難を乗り切った仲間として認め合った瞬間に思えた。



「ところで宗麟、その幽門とやらは開いたのでしょうか?」

「いんや、まだ限界に達していなかったようだ。もう一店舗行けるか?」



 それを聞いてツィタニアの心が折れた。



「さすがにそれは、ウェップ……もう出そうですぅ」



 同じく何かこれ以上食べ物を入れる事等できそうにない。静かに宗麟はメモ帳を取り出すと今回の幽門を開く方法にバツをつけた。

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