異世界に行く方法その1

 宗麟そうりんのオカルト研究同好会の部室にてお客様用の座布団に座るツィタニア。二人で茶を飲みながらどら焼きなんかを齧っている。



「宗麟、その雑誌読み終わりましたか?」

「あぁ、それ唯一読めるバトル漫画が休載だった」

「なんという事でしょう! この雑誌の価値なんてあのバトル漫画以外にありえませんよね!」



 漫画鑑賞会……ではない。異世界に行く為の方法をエンタメから何かヒントはないかと探しているのである。



「宗麟がこの前言っていた””という物はどうなんでしょうか? 情報の賢者なのでしょう?」

「あぁ、だがしかし、他者の情報を借りるのは死ぬほど探してそれからだろ? それとも精霊王サマ(笑)はすぐにでも誰かに頼るんですか?」



 宗麟が思いっきり馬鹿にするので、ツィタニアは顔を真っ赤に染めて怒る。手足をバタバタとばたつかせるその姿を見て宗麟は一言。



「うぜぇな。とりあえずやるぞ! ちょいオモテ出ろやオモテ」



 ツィタニアを車が走る道路の前まで連れてきた宗麟。近くに見つけたコンビニで宗麟は菓子パンと珈琲牛乳を買うとオブジェに腰掛けてそれを食べる。



「宗麟、食事ですか? こんなところで」

「おっ、精霊王サマ丁度えぇのが来ましたで」

「はい?」



 菓子パンを飲み込むように食べると宗麟はメモ帳をツィタニアに見せる。ツィタニアはそれを読もうとするが当然ツィタニアからすれば異世界の文字なんて読めるわけがなく閉口する。それに対して宗麟が変わりに読む。



「ぱんぱかぱーん! 記念すべき異世界へ行く実験第一回は、ベタベタでテンプレとか言われちゃうトラックに轢かれてみた! はい精霊王サマ、やってみよう!」



 びゅんびゅん走り去っていく自動車。それもトラック相手に体当たりを決める。

 それはエンタメ的には実にクールで、リアルでは実に迷惑な自殺。



「宗麟、これは大丈夫のやつでしょうか?」

「まぁ俺の知る限りでは一番メジャーな異世界に行く方法だが、それを成功したという話は現実的には聞いた事はないな。やるか、やらないかは、精霊王サマ次第だ」



 精霊王ツィタニアは覚悟を決めると、10トントラックが走って来る前に飛び出した。よくあるぴゅーんと吹っ飛んでいく情景を宗麟は想像していたが、地面にめり込むようにツィタニアは轢かれた。



「やっべ、これ死んだかも」



 トラックの運転手が青い顔をして降りてくる。宗麟はコンビニのビニール袋に食べている途中物を淹れるとそこから逃げる準備をした。



「痛い、痛すぎますよ宗麟!」



 ボロ雑巾のようになりながらも死なないツィタニアの手を引っ張ってその場から逃げる。トラックの運転手が何か声を上げるが心臓が破裂するくらい全速力で逃げる。

 公園のベンチに座り、深呼吸をするように呼吸が落ち着くのをしばし待つ。宗麟は赤ペンで”トラックに轢かれる”という項目に斜線を入れた。



「この方法では異世界には行けないと」

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