異世界に行く100の方法

一欄台学園文芸部

異世界に行く方法その0

「かしこみたまぇ~! かしこみたまえぇ~!」



 十字架を首からぶらさげ、数珠を両腕につけ、神社の宮司さんや巫女さんがお祓いをしてくれる幣を持って黒ミサまがいの事をしている少年。


 一欄台学園、二年生。オカルト研究同好会、部長・鳴宮宗麟なるみやそうりんは魔王を召喚する事が出来ると言われた魔術書を近所の古書店で手に入れ、それを実行していた。


 ちなみに、オカルト研究同好会、以降オカ研は部ではない。三人集まってはじめて部として認められるわけだが、部員を集めをするわけもなく、たった一人の同好会として、今の位置に甘んじていた。



「かしこみたまぇ~! アーメン・ナムアミ・かーつ!」



 100%の呪文を唱えると共にオカ研の部室もとい、科学準備室は眩い光に包まれた。


 キュオォオオオオオン!


 そんな音は鳴らないので、宗麟はDTMでその効果音を鳴らす。光に目が慣れてくると宗麟はゴクリと生唾を飲む。一人しかいないハズのこの部室に何者かが……圧倒的なプレッシャーを放つ何者か……数学の坂田先生でない事を祈りながら宗麟は召喚されし者と目があった。



「魔王よ! この精霊王ツィタニアの命を賭した最終魔法ファイナルテストとくと思いしれぇい!」



 唖然とした。

 宗麟は空いた口が塞がらない。やや露出の多いドレスのような服装をきて頭やら服やらにやたらと綺麗な花がついた頭のゆるそうな女がいるのだ。



「ここは? 魔王との最終決戦は? え? えぇ! なにこれぇ!」

「じゃかあしいわ! なんじゃワレぇ! なにかしこまれてとんねん! ワレの言う魔王呼んどんねん! 頭の緩い異世界に帰れ! このクソビッチがぁ!」

「な、なんと失礼な人間でしょう。魔王を召喚しようとしていたなんてろくな人間ではありませんね。貴方にとっておきの死が訪れん事を……それでは、バラムンの塔にて魔王との最終決戦の途中でしたので」

「あぁ、二度と呼ばれてもくんなよ! カスが」



 宗麟の暴言を背中で受けながら、精霊王ツィタニアと名乗る少女は微動だにしない。それに宗麟はイラ立ちはじめる。



「はよ、いけ!」

「……えない」

「は? なんて?」

「魔法が使えないの! 貴方がこんなところに呼び出したから」



 宗麟はツィタニアに魔法とは何かという講義を小一時間受ける。ホワイトボードに描かれたそれは自然界にいる神々の力がそこら中に魔力の素。魔素エイジスとして溢れているらしいのだが、この宗麟達の世界は花粉と光化学スモッグが溢れ魔素が全くないという事。そしてそれはイコールとしてツィタニアが元の世界に還れないという事に直結した。



「どうしてくれんですか!」



 面倒臭そうな顔をしてから宗麟は45度腰を曲げて頭を下げる。ツィタニアは何が起きたのか分からないが宗麟の言葉を聞いて絶望する。



「すまん!」



 攻撃的な宗麟が素直に謝罪……それにツィタニアは一瞬戸惑うが、それ以上何も言わない宗麟の胸倉をつかむ。



「貴方! 謝って済む問題じゃないでしょう! どうするんですか? 今すぐにでも元の世界に戻らないと、魔王が……あそこに魔王がいるのですから!」

「魔王、魔王がいるのか? なら、クソビッチ。貴様を異世界に連れて行ってやろう」

「できるの?」

「嗚呼、今からツイッターで異世界に行く方法を聞いてみる。大船に乗るつもりで待ってろや!」



 オカ研部長の鳴宮宗麟と精霊王ツィタニアの異世界へ行く方法を調べる無謀な実験が今開始されようとしていた。

 ツィタニアは果たして元の世界に帰れるのか? 宗麟は憧れの魔王と対面できるのか?


 異世界に行く100の方法はこうして開始された。

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