第54話 ウエスタ連邦の侵攻
ここ最近、裏街が騒がしいような気がする。
「ドンドコさん、秘薬がやたらと売れますね。」
「ルシャちゃん、これは秘密なんだけどね。戦争になるかもしれないんだって!」
「ええっ!戦争!?」
シーっと指を口に持っていきながら、ドンドコさんは続けた。
「ウエスタ連邦がね、国境線を超えてきてるらしいよ。」
それで軍関係の納入が多いのか。
私は暗い気持ちになった。
イチや第五の騎士たちも、またウエスタ方面に行くのかな?
どうして戦争なんて起こるんだろう?
***
ティアが俺を中央司令本部に呼んだ。
「イチ、ウエスタ連邦に大きな動きがあった。
いくつかの部族が連合を組んで
「なんで
「最近サウス帝国がウエスタ連邦に圧力をかけている。
サウス帝国とウエスタ連邦の国境付近には鉱山が多い。
そこを帝国に押さえられて金がないんだ。」
「トバッチリじゃねぇか。サウス帝国も強欲だなぁ。
大国なんだし、金は持ってるだろ?」
「3年前に女帝に変わってから、今まで以上に金もうけに走り出したね。
各方面の司令官にも管轄地での守りを固めるよう国王陛下から命令が下った。
ウエスタ攻略の間に、他方面からの侵攻を防ぐためだ。」
「イチ、ウエスタ連邦は国としてのまとまりにかける。だから政治的な話を通しにくい。サウス帝国の力も絡んで、今回はかなりこじれている。
落ち着かせるには時間も必要だ。話は急がせるが、国境線は死守しておいてくれ。
ウエスタ方面担当の西方司令官はジェラーニ王弟殿下だ。
知っての通り、やる気も実力も無いうえに、謀反をたくらみ中の男だ。
君が彼の第二軍を上手く展開させておいてくれ。」
「ハァー、めんどくせ!
さっさとバカ殿下を殺してさ、もっとマシなのつけろよな!
なんなら今回の出撃の時にさ、後ろからグサってやっといてやるよ!」
「イチー、君は静かに殺れないタイプだからさ。おとなしく最前線でのみ暴れてくれたまえ。」
***
「ウィンクル!ジョイ!西方司令官からの協力要請だ。
今回は第五も総力戦で来いとさ!
ジェラーニも本気出さないとまずいってよ。」
「えー。ウエスタ方面に行くと、日焼けでお肌が荒れちゃうのよねぇ。」
「ウィンクル!お肌より命の心配しろよ!」
「そんなにウエスタ方面がヤバいんですかー?」
「サウス帝国の強欲女帝がさぁ、ウエスタにちょっかい出しやがって。
トバッチリだ。」
***
「よし!気合入れるか!!」というイチ大佐の一声で飲み会になった。
(ウィンクルさんはエステに行った。)
大佐のおごりなので、第五の騎士たちは水のように秘薬酒を流し込んでいる。
「なーんでドンドコの店なんだよ。誰だ!?場所設定したのは!
ジョイ!オマエか!?」
なぜか大佐はちょっと不満げだ。
「ち、違いますよ。アジカです。彼はルシャちゃんがお気に入りなんです。」
「ハァ?アジカは怖い嫁がいるだろ?」
「ルシャちゃんとアジカは、死線を共に潜り抜けた戦友ですからね。
他の隊員たちも、ここに通ってますよ。」
「マジかよ?」
大佐が少しだけ、焦った顔をしたような気がした。
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