第33話 鬼畜のマインティア様

ティアと俺は「ゲーム」をしている。

親父の言い遺した「パワーバランスゲーム」だ。


ティアを守るのが俺の役割だと親父は言った。

同期のよしみだ。しゃーない。性格は悪いが守ってやるか。



綺麗な顔して中身は鬼畜だが、この国には必要な人間だからな。



***



今回の出撃の戦果報告を終えたあと、ティアがいきなり言い出した。


「ところでさ、イチ。彼女、紹介してよ。」

こちらを横目で見ながら、ニヤニヤしている。


「ハァ?」

「ルシャって娘、付き合ってないの?」


「アホか。あんなガキ。」

「愛に年齢は関係ないよ。もう最後までいった?」


「アホか!」

「まだなの?ずいぶん丁寧に扱ってるな。」

ティアが妙に呆れた顔をしている。


「魔力は戻ったし、もう用はない。」

「なんだ、興味はないの?」


「ねぇよ。教会に帰した。」

「魔力を奪う娘を?そのまま?殺さないで?」


「おっそろしいこと普通に言うなよ。」

イタズラ天使みたいな顔して、コイツはすぐこういうことを言う。


「野放しにしておくには危険な力だよ。」

青い瞳が急に鋭くなった。


「分かってる。ジョイが温泉を掘りに教会に行った。メンテナンスにかこつけて監視はしてる。」



「ちゃっかり警戒してるじゃないか。もう彼女にしてたら、勝手に殺すのマズいかと思って。気を遣ったのにさ。」


「殺す気なのか?」


「うーん。彼女の能力を分析したいとボンバル院長には言われてはいる。

魔力を奪える能力なんて聞いたことがない。

私も興味はある。


奪った魔力を返せるのもおもしろいな。

軍事的にも使える人材かもしれないが…。


素性も知れないし、面倒を起こす前に始末するのが妥当かなと思っている。」


「冷たいヤツだ。」


クスっと笑う。

「なんだ、やっぱり情が移っているんじゃないか。」



「そんなんじゃない。闇気やみけがないし、ほっとけ!」


「一度会いたいな。」


「好きにすればいい。」


「まぁとりあえず、院長の解剖欲を満たしてあげようか。

彼女には医療院で働いてもらうとかどう?監視もしやすいしね。」


ティアは総司令官の椅子にドサッと背中をあずけ、意地悪そうに笑った。

「スカウトしてきてよ。」


「俺が!?自分で行け!」


「私は忙しい。」


「俺もだ!俺は絶対行かねぇからな。」


「どうして?私が落としてもいいのか?」


「15も、おまえは13か?13才も年下だぞ?」


「いいじゃないか、別に。意外と常識人な所があるよね、イチは。

娼館に通ってばっかりなのに。」


「うるさいな!娼婦は楽でいい!

金払う!ヤる!以上!あとくされなし!」


「やれやれ、プロばっかり相手にしているから、男女の機微きびが分からなくなるんだよ。」


「キビー?なにそれ?食いもんか?」


「もういいよ。」

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